トマーティン蒸留所(Tomatin Distillery)|スコットランド・ハイランドのスコッチウイスキー蒸留所

トマーティン蒸留所は1897年、スコットランド北部ハイランドのトマーティン村に設立された。インヴァネスの南約23kmに位置し、標高約315mという比較的高地の環境での熟成が、このウイスキーに独特の清涼感をもたらしている。蒸留所を流れるアルトリーハ川(Alt na Frith)の軟水が仕込み水として使われている。

20世紀中頃には23基のポットスチルを稼働させ、スコットランド最大の生産量を誇った時期もあったが、1980年代の不況で縮小。1985年に日本の宝酒造(現・宝ホールディングス)と大阪の日本生命が共同で取得し、日本の蒸留所としては初のスコットランド蒸留所所有となった歴史的な出来事として記録されている。現在も宝酒造グループが経営を続けている。

日本企業の傘下となったことで品質志向の経営が確立され、「レガシー」「12年」を中心としたコアレンジが世界市場で着実に評価を積み上げている。SFWSCやIWSCなどの国際コンテストで繰り返し金賞を受賞しており、2023年には「ベスト・ハイランド・シングルモルト」に選出されるなど、宝酒造との連携によるジャパニーズ・クオリティが評価されている。

特徴

ハイランド・インバネス近郊の大規模蒸留所。年間生産能力500万リットル超。軽やかでフルーティなハウススタイルで、日本の宝酒造が所有。

歴史

トマーティン蒸留所は1897年、モナドリアス山地の標高315mに「トマーティン・スペイ蒸留所」として創業した。インヴァネス南方約25kmの高地の立地と清澄なアルト・ナ・フリー川の水に恵まれた環境が蒸留所の個性を形作っている。

1950〜70年代にかけて拡張が続き、最盛期には23基のスチルを稼働させ年間1,250万リットルという国内最大級の生産規模を誇った。しかし業界の構造変化により1985年に経営破綻。翌1986年、日本の宝酒造とオークラ商事が共同買収し、スコットランドの蒸留所を保有した最初の日本企業の一つとなった。

その後は量産体制から品質志向へ転換し、スチルを12基に削減してシングルモルトの充実に注力。「レガシー」「12年」「クー・ボカン(ヘビーピーテッド)」など現代的ラインナップを確立した。Icons of Whisky Scotland 2023年で「Sustainable Distillery of the Year」を受賞するなど環境・品質両面での評価が高い。

基本情報

正式名称 トマーティン蒸留所(Tomatin Distillery)|スコットランド・ハイランドのスコッチウイスキー蒸留所
創業年 1897年
操業状況 稼働中
所有会社 宝酒造株式会社(Takara Shuzo Co., Ltd.)
見学 可能
公式サイト https://tomatin.com/

蒸留所情報

蒸留器数 12基(ウォッシュ×6、スピリット×6)
蒸留方式 ポットスチル2回蒸留
水源 Alt-na-Frith川(モナドリアス山地の雪解け水)
熟成倉庫 ダンネージ式・ラック式
年間生産量 年間約500万リットル
主力ジャンル ウイスキースコッチウイスキー
主要ブランド クー・ボカントマーティン

代表銘柄

所在地

イギリス
都道府県州 Inverness-shire
住所 Tomatin, Inverness-shire IV13 7YT, Highland, Scotland
郵便番号 IV13 7YT

この地域について

トマーティンはスコットランド・ハイランド地方インヴァネスシャーの小村で、インヴァネス市街から南東約25kmのA9幹線沿いに位置する。標高315mという高原の立地はウイスキー蒸溜に理想的な冷涼な気温をもたらし、モナドリアス山地(Monadhliath Mountains)の雪解け水がアルト・ナ・フリー川(「鹿のバーン」の意)として蒸留所敷地を流れる。

ハイランド地方はスコットランドで最も広大な地域で、起伏に富んだ山岳地帯から北海沿岸の絶壁まで変化に富む地形が広がる。農業と牧畜が盛んな内陸部では大麦の栽培が古くから行われており、豊富な湧水と組み合わさることで多くの蒸留所が立地する根拠となった。現在ハイランドには30以上のモルトウイスキー蒸留所が点在し、スペイサイドに次ぐ産地として世界に知られている。

インヴァネスはケイランス(Caledonian Canal)の東端に位置するハイランドの中心都市で、「ハイランドの首都」とも呼ばれる。近郊のカロデン・ムーア(Culloden Moor)は1746年にジャコバイトの乱(チャールズ・エドワード・スチュアートのイギリス王位奪還運動)が終焉を迎えた歴史的戦場で、スコットランド文化の悲劇的記憶を今に伝える。ネス湖(Loch Ness)はインヴァネスの南西に連なるスコットランド最大の淡水湖で、伝説の怪物「ネッシー」の棲む湖として世界的に知名度が高い。

1897年に創業したトマーティン蒸留所は1986年に宝酒造の傘下に入り、スコットランドの蒸留所を保有した最初の日本企業の一つとして知られる。安定した品質管理と多彩なラインナップで世界市場での評価を着実に高めている。

受賞歴

コンテストグレード銘柄
2024 SFWSC ダブルゴールド トマーティン 12年
2023 SFWSC ダブルゴールド トマーティン 12年