タムナヴーリン蒸留所は1966年、インヴァゴードン・ディスティラーズ社によってスペイサイドのトムナヴォーリン村近郊に設立された。蒸留所の名前は地名そのものであり、ゲール語で「丘の上の製粉所(mill on the hill)」を意味する。実際、蒸留所は16世紀に建てられた古い水車小屋の跡地に立てられており、その歴史的な場所への敬意が名前に込められている。リヴェット川の清澄な水を仕込み水に使い、スペイサイドの豊かな大自然の恵みを受けてウイスキーが育まれる。
設立当初から、ホワイト&マッカイ、クロフォーズ、マッキンレーズなどのブレンデッドウイスキーへのキーモルト供給を目的として運営されていた。1994年にホワイト&マッカイの傘下に入ったが、間もなく生産を休止。2000年に一時的に再稼働した後、2007年に大規模なリノベーションを経て本格的な生産再開を果たした。2014年にはフィリピンの飲料大手エンペラドール社がホワイト&マッカイを買収したことで、タムナヴーリンもエンペラドール傘下となった。
2014年以降、タムナヴーリンは積極的なリブランディングと新製品開発に力を入れ、グローバル市場での存在感を高めた。特に注目を集めたのが「ダブルカスク」シリーズと「ホワイトワイン・カスク・エディション」だ。後者はソーヴィニョン・ブラン樽でフィニッシュするという革新的なアプローチで話題となり、ISCとサンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティションの双方で金賞を受賞した。従来のスコッチの枠を超えた実験的なカスク使いが新世代の愛好家を惹きつけている。
タムナヴーリンの風味スタイルは草のようなグラッシーさ、野の花のようなフローラルさ、青リンゴや洋ナシといった青果系のフルーティーさが特徴とされる。近年はシェリー樽フィニッシュのエディションも好評で、手頃な価格帯でシェリー感を楽しめるコスパ最強のスペイサイドモルトとして評価が急上昇しており、ウイスキー初心者から上級者まで幅広い層が愛飲するブランドへと成長した。