スプリングバンク蒸留所(Springbank Distillery)|スコットランド・キャンベルタウンのスコッチウイスキー蒸留所

スプリングバンク蒸留所は、スコットランド・キンタイア半島のキャンベルタウンに位置する1828年創業の蒸留所だ。J.&A.ミッチェル家族が約200年にわたり所有するスコットランド最古の独立系家族経営蒸留所として知られる。大麦の仕入れから麦芽製造・蒸留・熟成・瓶詰めまでの全工程を単一敷地内で完結させるスコットランド唯一の蒸留所であり、「ウイスキー飲みのウイスキー」と称される世界最高水準の品質で知られる。

同一設備でスプリングバンク(2.5回蒸留・中ピート)・ロングロウ(2回蒸留・ヘビーピート)・ヘーゼルバーン(3回蒸留・ノンピート)という三系統の銘柄を製造するという独自のアプローチを持つ。少量生産・独立資本の哲学が高いブランド価値を生み、毎年のリリースは世界中から注目を集める希少なシングルモルトだ。

特徴

スコットランド最古の独立系家族経営蒸留所(1828年〜ミッチェル家200年)。仕込み〜瓶詰め全工程を敷地内で完結するスコットランド唯一の蒸留所。自社フロアモルティング100%。スプリングバンク・ロングロウ・ヘーゼルバーンの三銘柄を同一設備で製造。

歴史

キャンベルタウンのウイスキー史は1591年まで遡るとされ、19世紀前半には30以上の合法蒸留所が林立していた。スプリングバンクは1828年にアーチボルド・ミッチェルが先祖の密造蒸留所跡に免許を取得して創業。1837年に息子のジョンとウィリアムが引き継ぎJ&Aミッチェルを設立し、以降約200年にわたりミッチェル一族の手で守られてきた。


キャンベルタウンのウイスキー産業は1920〜30年代に急速に衰退し多くの蒸留所が閉鎖される中、スプリングバンクも1926〜35年と1980年代後半に操業停止を経験した。1989年に生産を再開し、1992年にはフロアモルティングを復活させた。現在もスコットランドで唯一、大麦の仕入れから麦芽製造・蒸留・熟成・瓶詰めまでの全工程を単一敷地内で完結させる。


スプリングバンク・ロングロウ・ヘーゼルバーンという三系統の異なる蒸留回数・ピートレベルのシングルモルトを同一設備で製造する点が特異的で、少量生産・独立資本・品質優先の哲学が世界のウイスキー愛好家から「ウイスキー飲みのウイスキー」として絶大な支持を得ている。

基本情報

正式名称 Springbank Distillery
創業年 1828年
操業状況 稼働中
所有会社 J. & A. Mitchell & Co. Ltd.(ミッチェル家族経営)
見学 要予約
公式サイト https://www.springbank.scot/
Wikipedia Wikipedia
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蒸留所情報

蒸留器数 3基(ウォッシュスチル1基・スピリットスチル2基)
蒸留方式 ポットスチル(銘柄により2回・2.5回・3回蒸留を使い分け)
モルト使用 自社フロアモルティング100%(スコットランド唯一)、銘柄によりノンピート〜ヘビーピート
水源 クロス・ヒル湖(Cross Hill Loch)
熟成倉庫 ダンネージ式6棟・ラック式2棟(全量キャンベルタウン内で熟成)
年間生産量 年間最大75万L(実生産約27.5万L)
使用樽 バーボン樽(ホグスヘッド)、シェリー樽(ホグスヘッド・バット)、ラム樽・マデイラ樽・ポートパイプ
主力ジャンル ウイスキースコッチウイスキー
主要ブランド スプリングバンク
Springbank(2.5回蒸留・中ピート)
Longrow(2回蒸留・ヘビーピート)
Hazelburn(3回蒸留・ノンピート)

代表銘柄

所在地

イギリス
都道府県州 アーガイル・アンド・ビュート
住所 Well Close, Campbeltown, Argyll, PA28 6ET, Scotland, UK
郵便番号 PA28 6ET

この地域について

キャンベルタウンは、スコットランド西海岸からアイリッシュ海に向けて細長く延びるキンタイア半島の先端近くに位置する港町だ。北アイルランドまで直線距離約65kmという近さで、地理的にもアイルランドとの歴史的・文化的つながりが深い。キャンベルタウン湾(Campbeltown Loch)に抱かれたこの町はかつてニシン漁業と石炭採掘で栄え、19世紀後半にはスコットランドで最も密度の高いウイスキー産地として全国に名を轟かせた。全盛期の1887年には32もの蒸留所が林立し、「ウイスキーの首都」とまで称された。

キンタイア半島の最南端に近いモル・オブ・キンタイア(Mull of Kintyre)はスコットランド本土とアイルランドの絶景の岬で、1977年にポール・マッカートニーが発表した楽曲「Mull of Kintyre」で世界的に知名度が高まった。荒々しい岬からはアイルランドのランラビー海岸が見渡せる。沖合に浮かぶダヴァール島(Davaar Island)の洞窟には1887年にアルカリッヒ・マッキノンが描いたキリストの磔刑図の壁画が現存し、地域の精神的シンボルとなっている。島は干潮時のみ歩いて渡れるトンボロ(陸繋砂州)でつながれた自然の造形も見どころだ。

20世紀初頭の禁酒運動・品質問題・世界恐慌・戦争により蒸留所は次々と閉鎖し、最盛期30以上あった蒸留所は現在3軒(スプリングバンク・グレンスコシア・グレンガイル)のみとなった。それでもキャンベルタウンはスコッチウイスキー規則で独立した産地として認定された5地域の一つに数えられており、スプリングバンク蒸留所は1828年から約200年にわたり、麦芽製造から瓶詰めまで全工程を町内で完結させるスコットランド唯一の独立系家族経営蒸留所として、キャンベルタウンの誇りであり続けている。

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