三郎丸蒸留所の母体である若鶴酒造株式会社は1862年(文久2年)に富山県砺波市で創業。2代目社長・稲垣小太郎が1950年代の洋酒ブームを捉え、1952年にウイスキー製造免許を取得して蒸留を開始した。以来、冬に日本酒、夏にウイスキーを仕込む二毛作スタイルで酒造りを続けてきた北陸唯一・最古のウイスキー蒸留所である。1953年には「サンシャインウイスキー」として初製品を世に送り出した。
2017年に大規模な設備改修を行い、現代のクラフトウイスキー製造に対応した蒸留所として生まれ変わった。最大の革新は2019年に導入した鋳銅製ポットスチル「ZEMON(ゼモン)」。高岡市の梵鐘(ぼんしょう)鋳造で知られる老子(おいご)製作所と共同開発したこのスチルは、錫を含む特殊な銅合金から作られており、2020年に特許を取得。世界初の試みとして国際的な蒸溜業界で大きな注目を集めた。
ZEMONが生み出す独特のミネラル感と丸みのある酒質は「三郎丸」ブランドの大きな個性となり、国内外のコンテストで複数の受賞歴を積み重ねている。地元富山の伝統工芸技術とウイスキー製造を融合させたストーリーが愛好家・メディア双方に高く評価され、国内外から見学者が絶えない蒸溜所として富山の新たな観光・文化資源にもなっている。
三郎丸蒸留所は富山県砺波市のチューリップで有名な散居村の一角に位置し、田園風景の中に佇む蒸留所の姿は日本のクラフト蒸留所ならではの情緒がある。見学ツアーは予約制で実施されており、ZEMONポットスチルの独特な形状と鋳造工程の説明は他では体験できない特別なプログラムとして評判を呼んでいる。