モートラック蒸留所はスコットランド・スペイサイドのダフタウンに位置し、1823年のイクサイズ法(消費税法改正)施行直後にジェームズ・ファインドレーターによって設立された、同地方で最初に認可された合法蒸留所である。それ以前から存在した密造蒸留所の跡地を利用した経緯もあり、ダフタウンのウイスキー産業の礎となった歴史的な蒸留所として知られている。ダフタウンに単独で存在した唯一の蒸留所として長年にわたり操業を続け、後にグレンフィディック(1887年)など周辺の多くの蒸留所が創業するきっかけとなる先駆的役割を果たした。
1850年代以降、ジョージ・カウィーと息子アレクサンダーがモートラックを引き継ぎ、蒸留所を大きく発展させた。1897年には蒸留所建築家チャールズ・C・ドイグとの協力のもと大規模な拡張が行われ、独自の「2.81回蒸留」プロセスが確立された。これは通常のポットスチル2回蒸留とは異なる複雑な蒸留方式で、6基のスチルを用いた独自の還流システムによりモートラック独特の肉厚でリッチなフレーバーが生み出される。1923年にはジョン・ウォーカー&サンズが蒸留所を取得し、現在はディアジオが所有。ジョニーウォーカーをはじめとするプレミアムブレンドの主要原酒として今日も重要な役割を果たしている。
モートラックは「ダフタウンの猛獣(The Beast of Dufftown)」というニックネームで知られるほど、個性的で力強いキャラクターを持つスペイサイドウイスキーとして業界で高い評価を受けている。その独特の肉感的(meaty)なフレーバーとシェリーカスク熟成との高い親和性が愛好家の間で熱烈に支持されており、2023年のインターナショナル・ウイスキー・コンペティションではゴードン&マクファイルのコニサーズ・チョイス31年が「ウイスキー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。また2024年のワールド・ウイスキー・アワードではモートラック16年がブロンズを獲得するなど、世界各地のコンペティションで継続的な評価を受け続けている。ジム・マレーのウイスキー・バイブルでも複数の表現が90点台を記録しており、スペイサイドの隠れた逸品として世界的な注目が高まっている。
テイスティングノート
香り
ダークフルーツ(レーズン、ドライイチジク)、革、黒糖、ダークチョコレート。シェリーと肉感的なエステル香。
味わい
力強くヴィスコース(粘性)のある口当たり。ダークフルーツ、ハードキャラメル、スパイス。独特のミート感と複雑さ。
余韻
長くリッチな余韻。ドライシェリー、スパイス、チョコレートが残る。「ダフタウンの猛獣」の面目躍如。