マルス信州蒸溜所は、1949年にウイスキー製造を開始した本坊酒造が、1985年に長野県上伊那郡宮田村(中央アルプス山麓、標高798メートル)に設立したモルトウイスキー蒸溜所。本坊酒造の顧問を務めた岩井喜一郎の指導のもとで始まったウイスキー事業の集大成として建設された蒸溜所で、冷涼な高地気候と南アルプス・中央アルプスの伏流水が熟成を育む。バブル崩壊後の市場縮小により1992年に操業を一時停止したが、日本ウイスキーの再評価機運が高まった2011年に再稼働し、現代の「マルスウイスキー」として新たな歩みを踏み出した。
こだわりのコンセプトは「クリーン&リッチ」であり、きれいさだけでなくしっかりとしたボディを備えた酒質を目指している。ポットスチルはバルジ型のランタンヘッド型を採用し、コンデンサーには銅製ワームタブを使用することで複雑な風味の形成を促している。発酵にはハンク酵母を含む複数の酵母を組み合わせ、長時間の発酵で深みのある麦汁を醸している。2024年には事業所名がマルス信州蒸溜所からマルス駒ヶ岳蒸溜所へ変更され、新たなブランドアイデンティティのもとで活動している。
「駒ヶ岳」シリーズを中心に、WWA(ワールド・ウイスキー・アワード)など国際コンテストで複数の受賞歴を持ち、鹿児島のマルス津貫蒸溜所との2拠点体制によるヴァッティングも評価を高めている要因のひとつ。高地熟成がもたらす凝縮感と温暖地熟成のリッチな甘みを掛け合わせた表現は、日本の地理的多様性を活かしたウイスキーとして世界の愛好家から高い関心を集めている。