ロングモーン蒸留所(Longmorn Distillery)|スコットランド・スペイサイドのスコッチウイスキー蒸留所

ロングモーン蒸留所は1894年創業のスペイサイドを代表する歴史ある蒸留所だ。エルギン近郊のロングモーン村に位置し、豊富な湧き水と良質な大麦に恵まれた環境でつくられるモルト原酒は、長年スコッチブレンダーたちの間で「ブレンダーズ・ドリーム」と称されるほど高い評価を受けてきた。現在はペルノ・リカールグループ傘下のシーバスブラザーズが所有・運営している。

特徴

ワームタブ(ワーム式冷却)を採用した伝統製法。豊かな果実味と絹のような口当たりで「ブレンダーズ・ドリーム」と称される。シーバスリーガル、ロイヤルサルートなど名門ブレンドの骨格原酒として重用されてきた。

歴史

ロングモーン蒸留所は1894年、ジョン・ダフとチャールズ・グラントラム・ブラウンによってエルギン近郊のロングモーン村に設立された。モレイ・ファースの豊かな大麦農地と良質な湧き水に恵まれたこの地はウイスキー生産に理想的な環境であり、創業当初からその原酒は高い評価を受けた。1898年には増設工事が行われ、生産規模が拡張された。その後20世紀を通じて数度の所有者変遷を経て、1970年代にシーバスブラザーズの傘下となり、現在はペルノ・リカールグループの一員として稼働している。

ロングモーンはスコッチウイスキー業界でながらく「ブレンダーズ・ドリーム」と称されてきた。その豊かで複層的な果実味と絹のような口当たりは、グレンリベット、グレンフィディックと並ぶスペイサイドの名品として著名なブレンダーたちから賞賛され続けた。特にシーバスリーガルやロイヤルサルートといた名門ブレンドの骨格を支える原酒として重宝されてきた歴史を持つ。蒸留所の規模は決して大きくないが、ウォームタブ(ワーム式冷却)を採用した伝統的製法が独特の重厚感と果実のニュアンスをもたらしている。

現代においてロングモーンは少量ながらもシングルモルト表記でリリースされるようになり、長年の「影の立役者」から世界の愛好家が注目するブランドへと転換を遂げた。シーバスブラザーズは2023年に長熟・高年数ラインナップのリニューアルを発表し、ロングモーンを自社ポートフォリオの重要な柱として位置づけている。今後さらなる注目が集まることが期待されるスペイサイドの実力派蒸留所だ。

基本情報

正式名称 Longmorn Distillery
創業年 1894年
操業状況 稼働中
所有会社 Chivas Brothers(Pernod Ricard)
見学 不可能
公式サイト https://www.malts.com/en-gb/distilleries/longmorn/

蒸留所情報

蒸留器数 4基(ポットスチル)
蒸留方式 ポットスチル蒸留(2回蒸留)
モルト使用 ノンピート
水源 ロングモーン周辺の湧き水
熟成倉庫 ダンネージ式・ラック式
年間生産量 約350万リットル(年間)
使用樽 アメリカンオーク(エックス・バーボン)、ヨーロピアンオーク(シェリー)
主力ジャンル ウイスキースコッチウイスキー
主要ブランド ロングモーン
ロングモーン

代表銘柄

所在地

イギリス
都道府県州 Moray
住所 Longmorn, Elgin IV30 8SJ, UK
郵便番号 IV30 8SJ

この地域について

スコットランド北東部、インヴァネスとアバディーンの間に横たわるスペイサイドは、全長172kmのスペイ川が灌漑する豊かな農業地帯だ。源流をモナドリアス山地のロッホ・スペイ(標高約300m)に持つスペイ川は、スコットランド第3の長さを誇り最も流れの速い川の一つで、ケアンゴームズ国立公園を抜けてモーレイ・ファース(Moray Firth)へと注ぐ。川が育む軟水とミネラルバランス、周辺農地の良質な大麦、ケアンゴームの泥炭——この三拍子が世界最高密度のウイスキー産地を形成した背景にある。スペイ川はまた「スペイキャスト」と呼ばれる独自のフライフィッシング技法の発祥地として知られ、サーモン釣りを求める世界中のアングラーを引き付ける英国随一の鮭川でもある。

1823年の消費税法(Excise Act)成立が密造横行の時代に終止符を打ち、翌1824年にジョージ・スミスがグレン・リヴェット渓谷で最初の合法免許を取得。モダン・スコッチ産業の礎を築いた。19世紀後半にグレート・ノース鉄道がスペイサイドに開通すると大麦・石炭・樽の輸送が一気に整い、各地で蒸留所創業ラッシュが起きた。現在も稼働する蒸留所はストラスアイラ(1786年創業・スコットランド最古の連続稼働蒸留所)からダフタウン、アベラワー、クレイゲラキまで50以上が密集し、2009年のスコッチウイスキー規則でスペイサイドが独立産地として正式認定された。

スペイ川岸に建つ16世紀のバリンダロッホ城(Ballindalloch Castle)はマクファーソン=グラント家が数百年にわたり居住し続ける生きた史跡だ。全長116kmのスペイサイド・ウェイはモーレイ湾の港町バッキーからケアンゴームズの奥地まで続くロング・ディスタンス・ウォーキングルートで、沿道には蒸留所見学スポットが点在する。英国唯一の現役樽職人工房スペイサイド・クーパレッジや7蒸留所を巡るモルトウイスキー・トレイル(全長99km)は、毎年5月に開催される「スピリット・オブ・スペイサイド・ウイスキー・フェスティバル」と合わせて54カ国以上のウイスキーファンを呼び込む。

現在スコットランド全体のシングルモルトの約50〜60%がスペイサイド産であり、世界で最も売れる2大シングルモルト——グレンリベットとグレンフィディック——がともにこの地に根を持つことが、スペイサイドを「ウイスキーの聖地」たらしめている。