リンクウッド蒸留所(Linkwood Distillery)|スコットランド・スペイサイドのスコッチウイスキー蒸留所

リンクウッド蒸留所(Linkwood Distillery)は、スコットランド北東部スペイサイドのエルギン近郊に位置するシングルモルト蒸留所だ。1821年の創業以来200年以上の歴史を持ち、現在はDiageoの傘下で稼働している。ほのかにスモーキーで複雑な風味を持つモルトは、スコッチブレンデッドの重要な原酒として長らく重宝されてきた。

蒸留所内には野生の植物や動物を保護するための池と自然保護区が設けられており、「スペイサイドの庭園」とも呼ばれる緑豊かな環境の中に蒸留所は佇む。その美しい景観はウイスキー愛好家のみならず自然愛好家にも親しまれている。

特徴

スペイサイドらしい華やかな果実香と繊細なフローラルノートが特徴。蒸留所内に設けられた自然保護池の景観から「スペイサイドの庭園」と称される。蒸留設備は一切変更しないことで風味を守るという強いこだわりがあり、蜘蛛の巣が張った機器でさえ取り除くことを禁じたとされる逸話が残る。

歴史

リンクウッド蒸留所は1821年、ウィリアム・ブラウン(William Brown)によってエルギン郊外のリンクウッドハウス付近に設立された。スペイサイドの中でも最古級の蒸留所の一つであり、当初は農場蒸留所として地元農業と密接に結びついていた。創業当初から高品質なモルトを生産することで知られ、地域内でも一目置かれる存在だった。

19世紀後半の1872年に大規模な改修・拡張が行われ、1897年には法人化されてリンクウッド・グレンリニース蒸留所有限会社が設立された。20世紀に入るとSMD(スコッチモルト蒸留業者協会)の傘下となり、後にDCL、さらにUDV(ユナイテッド・ディスティラーズ&ヴィントナーズ)を経て現在のDiageo管理下に移行した。特筆すべきは長年の蒸留長ロデリック・マッケンジー(Roderick Mackenzie)の下で「設備を変えると風味が変わる」という信念が徹底され、老朽化した機器や配管はそのまま維持されたことだ。蒸留所内の蜘蛛の巣さえ除去を禁じたという逸話は、今もリンクウッドの象徴的なエピソードとして語り継がれている。

現在は2つのスチルハウスを持ち、合計6基のポットスチルで年間約250万リットルのスピリッツを生産している。その大部分はJ&B、Bell’s(Bell’s)、ホワイトホース(White Horse)などDiageo系の主要ブレンデッドスコッチの原酒として使われ、シングルモルトとしての公式ボトリングは希少だ。Diageoの「フローラ&ファウナ」シリーズと「スペシャルリリース」で不定期に登場するたびに愛好家から注目を集める。

基本情報

正式名称 Linkwood Distillery
創業年 1821年
操業状況 稼働中
所有会社 Diageo
見学 不可能
公式サイト https://www.malts.com/en-row/distilleries/linkwood/
Wikipedia Wikipedia

蒸留所情報

蒸留器数 ポットスチル6基
蒸留方式 ポットスチル蒸留
モルト使用 ノンピート(主に)
水源 Millbuies Loch(ミルビーズ湖)
熟成倉庫 ダンネージ式・ラック式
年間生産量 約250万リットル/年
使用樽 エックス・バーボン、シェリー
主力ジャンル ウイスキースコッチウイスキー
主要ブランド リンクウッド

代表銘柄

所在地

イギリス
都道府県州 Moray
住所 Linkwood, Elgin IV30 8RD, UK
郵便番号 IV30 8RD

この地域について

スコットランド北東部、インヴァネスとアバディーンの間に横たわるスペイサイドは、全長172kmのスペイ川が灌漑する豊かな農業地帯だ。源流をモナドリアス山地のロッホ・スペイ(標高約300m)に持つスペイ川は、スコットランド第3の長さを誇り最も流れの速い川の一つで、ケアンゴームズ国立公園を抜けてモーレイ・ファース(Moray Firth)へと注ぐ。川が育む軟水とミネラルバランス、周辺農地の良質な大麦、ケアンゴームの泥炭——この三拍子が世界最高密度のウイスキー産地を形成した背景にある。スペイ川はまた「スペイキャスト」と呼ばれる独自のフライフィッシング技法の発祥地として知られ、サーモン釣りを求める世界中のアングラーを引き付ける英国随一の鮭川でもある。

1823年の消費税法(Excise Act)成立が密造横行の時代に終止符を打ち、翌1824年にジョージ・スミスがグレン・リヴェット渓谷で最初の合法免許を取得。モダン・スコッチ産業の礎を築いた。19世紀後半にグレート・ノース鉄道がスペイサイドに開通すると大麦・石炭・樽の輸送が一気に整い、各地で蒸留所創業ラッシュが起きた。現在も稼働する蒸留所はストラスアイラ(1786年創業・スコットランド最古の連続稼働蒸留所)からダフタウン、アベラワー、クレイゲラキまで50以上が密集し、2009年のスコッチウイスキー規則でスペイサイドが独立産地として正式認定された。

スペイ川岸に建つ16世紀のバリンダロッホ城(Ballindalloch Castle)はマクファーソン=グラント家が数百年にわたり居住し続ける生きた史跡だ。全長116kmのスペイサイド・ウェイはモーレイ湾の港町バッキーからケアンゴームズの奥地まで続くロング・ディスタンス・ウォーキングルートで、沿道には蒸留所見学スポットが点在する。英国唯一の現役樽職人工房スペイサイド・クーパレッジや7蒸留所を巡るモルトウイスキー・トレイル(全長99km)は、毎年5月に開催される「スピリット・オブ・スペイサイド・ウイスキー・フェスティバル」と合わせて54カ国以上のウイスキーファンを呼び込む。

現在スコットランド全体のシングルモルトの約50〜60%がスペイサイド産であり、世界で最も売れる2大シングルモルト——グレンリベットとグレンフィディック——がともにこの地に根を持つことが、スペイサイドを「ウイスキーの聖地」たらしめている。