グレンタレット蒸留所は、スコットランドで現在も稼働する最古の蒸留所として広く知られている。1763年、パースシャー州クリーフ近郊のターレット川沿いに正式に設立されたが、その起源はさらに古く1717年頃から密造酒の製造地として使われていたとされる。サー・パトリック・マレーの賃借記録には「スロート蒸留所」という名称が記されており、これがグレンタレットの最古の記録として、最古の稼働蒸留所の称号を確固たるものにしている。
その後、蒸留所は閉鎖と再開を繰り返しながら歴史を刻み、1959年にはジェームズ・フェアリーによって本格的な復興が図られた。フェアリーは廃墟同然だった設備を手作業で修復し、伝統的な製法を守り続けた。長年「フェイマス・グラウス・エクスペリエンス」としてエドリントン・グループが運営していたが、2019年にスイスのラリック社との合弁により「ザ・グレンタレット」として生まれ変わり、ボブ・ダルガーノをマスターブレンダーに迎えて新たな章を開いた。
現代のグレンタレットは、少量生産・手仕事を徹底するクラフト精神で業界の注目を集めた。2021年にはウイスキー・マガジン主催のアイコンズ・オブ・ウイスキーでスコットランド蒸留所オブ・ザ・イヤーを受賞、ボブ・ダルガーノがマスターブレンダー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。2022年には31の業界賞を獲得し、トリプルウッド2022がIWSCのベスト・イン・ショーで99点という驚異的スコアを記録。ウイスキー・マガジン・デザイン・アワードでは2020年のメイデン・リリースの新ボトルデザインが6つのゴールドメダルを獲得し、トリプルウッドがベスト・リデザイン・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。
現在、蒸留所には2基のポットスチルのみが稼働し、年間生産量は約14万リットルと、スコットランドの大手蒸留所と比較すると極めて小規模だ。敷地内にはラリックと共同でオープンした一つ星レストラン「ザ・グレンタレット・ラリーク」があり、食とウイスキーの融合体験でも高い評価を受けている。スコットランド最古の名誉を持ちながら、最も革新的なアプローチで世界中のウイスキー愛好家を魅了する存在として独自の地位を確立している。