グレングラッサ蒸留所は1875年、地元の実業家ジェームズ・モア(James Moir)と甥のアレクサンダー・モリソン(Alexander Morrison)・ウィリアム・モリソン(William Morrison)によって創業された。アバディーンシャー北岸のサンデンド近郊ポートソイ(Portsoy)に位置し、敷地内を流れるグラッサ・スプリング(Glassaugh Springs)の湧水を仕込み水に用いる。この地は密造酒の産地として知られた歴史を持ち、合法的な蒸留所建設にあたっては水質・大麦へのアクセス・北海への出荷ルートが立地の決め手となった。1892年にハイランド・ディスティラーズが取得し、1908年、1936年、1986年と三度にわたる長期休止を経てきた数奇な経歴を持つ。
特に1986年から2008年にわたる22年間の閉鎖は蒸留所の存続を危ぶませたが、2008年に独立投資グループが取得して再稼働を実現した。再開後最初のリリース「リバイバル(Revival)」は長年の沈黙を破る復活を象徴する作品として愛好家から高い評価を受け、続く「エボリューション(Evolution)」では初充填テネシーオーク樽(ジョージ・ディッケル)での熟成という実験的なアプローチが注目を集めた。2009年のIWSC(国際ワイン&スピリッツコンペティション)では、30年物がベスト・カスクストレングス・スコッチウイスキー、40年物がベスト・40年物スコッチウイスキーのトロフィーを受賞した。
2016年にブラウン=フォーマン社(Brown-Forman Corporation)がベンリアック・ディスティラリー・カンパニーを買収したことで、グレングラッサもベンリアックおよびグレンドロナックとともに同グループの傘下に入った。スペイサイドとハイランドの境界という地理的特性を生かした潮風の影響が感じられる複雑なスタイルが特徴で、フルーティかつ塩気のあるキャラクターが高く評価されている。現行ラインナップは「ポートソイ(Portsoy)」「サンデンド(Sandend)」「コリエニン(Coire Bhairneach)」の3本柱で構成される。