クーリー蒸留所(Cooley Distillery)|アイルランド・ラウスのアイリッシュウイスキー蒸留所

クーリー蒸留所は、アイルランド北東部・ラウス県のクーリー半島に位置するアイリッシュウイスキーの聖地的存在。1987年にジョン・ティーリングが設立し、当時アイリッシュ・ディスティラーズ(ペルノ・リカール傘下)が独占していたアイリッシュウイスキー市場に100年ぶりの新蒸留所として参入した。その後の現代アイリッシュウイスキーの復興における最重要の出来事の一つとして、業界史に名を刻んでいる。

最大の技術的特徴はアイリッシュウイスキーとしては珍しい「ダブルディスティレーション(2回蒸留)」の採用で、これにより油脂分や重厚なフレーバーが残りやすい独自のスタイルを確立。コネマラ(ピーテッドシングルモルト)やタイルコネル(シングルモルト)、キルベガン(ブレンデッド)など個性豊かなブランドを擁し、アイリッシュウイスキーの多様性を世に示した先駆者だ。2012年にBeam Inc.(現サントリー グローバル スピリッツ)に買収され、現在もクーリー半島で稼働を続けている。

特徴

・1987年設立、アイルランドで100年ぶりの新蒸留所(ジョン・ティーリング創業)
・アイリッシュ・ディスティラーズの独占体制を打ち破り現代アイリッシュウイスキー復興の礎を築く
・ダブルディスティレーション(2回蒸留)採用:アイリッシュとしては異色の重厚スタイル
・ピーテッドスタイル(コネマラ)を現代に復活させたパイオニア
・2008・2009年 欧州蒸留所・オブ・ザ・イヤー受賞
・2012年にBeam Inc.(約7,100万ユーロ)に売却、現在はSuntory Global Spirits傘下

歴史

クーリー蒸留所の歴史は、1971年にジョン・ティーリングがハーバード大学で博士課程在籍中にウイスキー蒸留に関する論文を執筆したことにさかのぼる。アイリッシュウイスキー産業の可能性を早くから見抜いていた彼は、1987年にラウス県クーリー半島の廃工場(かつてジャガイモ由来のアルコールを製造していたCeimici Teorantaの施設)を改装し、クーリー蒸留所を設立。当時はアイリッシュ・ディスティラーズ(ミドルトン蒸留所とブッシュミルズを傘下に持つグループ)がアイリッシュウイスキー市場を事実上独占しており、クーリーはその牙城に挑む唯一の独立系蒸留所だった。

創業から黒字化まで11年、累積黒字化まで15年という長い道のりを経ながら、タイルコネル・シングルモルト、アイルランドでは半世紀以上ぶりとなるピーテッドシングルモルト「コネマラ」、シングルグレーンの「グリーノア」など革新的な製品を次々とリリース。旧式のコンバー蒸留所から移設した銅製ポットスチルを用いたダブルディスティレーション(2回蒸留)というアイリッシュ界では異色の手法で独自のフレーバープロファイルを確立し、2008・2009年には欧州蒸留所・オブ・ザ・イヤーを連続受賞した。

2011年12月、ジョン・ティーリングの息子ジャック・スティーブンが独立(ティーリング蒸留所設立へ)した翌年、クーリー蒸留所はアメリカのBeam Inc.に約9,500万ドル(約7,100万ユーロ)で売却された(2012年1月完了)。その後2014年にサントリーがBeamを買収したことにより、クーリーは現在「サントリー グローバル スピリッツ」傘下の蒸留所として稼働を続けている。熟成施設としてはクーリー本拠のほか、ウェストミース州のキルベガン蒸留所(200年以上の歴史を持つ花崗岩倉庫)も活用している。

基本情報

正式名称 Cooley Distillery
創業年 1987年
操業状況 稼働
所有会社 Suntory Global Spirits(サントリー グローバル スピリッツ)
見学 可能
公式サイト https://www.suntoryglobalspirits.com/
Wikipedia Wikipedia

蒸留所情報

蒸留器数 銅製ポットスチル2基(各16,000L)+コラムスチル2基
蒸留方式 ダブルディスティレーション(2回蒸留)※アイリッシュとしては珍しい方式
水源 クーリー山地(スリーブ・フォイ山系)のスリアブ・ナ・グロッハ川
年間生産量 モルトウイスキー約65万リットル/グレーンウイスキー約260万リットル(年産)
主力ジャンル ウイスキーアイリッシュウイスキー
主要ブランド タイアコネルコネマラ
【シングルモルト】タイルコネル(The Tyrconnell)【ピーテッドシングルモルト】コネマラ(Connemara)【ブレンデッド】キルベガン(Kilbeggan)【シングルグレーン】グリーノア(Greenore)/ キルベガン シングルグレーン【シングルモルト】ロックス(Locke's)

代表銘柄

所在地

アイルランド
都道府県州 ラウス県
住所 Riverstown, Cooley Peninsula, County Louth
郵便番号 A91 D850

この地域について

アイルランド32県の中で最も面積の小さい県として「ウィー・カウンティ(小さな県)」の愛称で親しまれるラウス県は、東海岸に位置しアイリッシュ海に面した歴史豊かな土地です。主要都市ドロヘダはボイン川河畔に発展したノルマン系の要塞都市で、1194年に市制が敷かれた古都。5世紀末に聖ブイテにより創設されたモナスターボイス修道院跡には、アイルランド最高傑作と称される高さ5.5メートルの「ムイレダックのハイクロス」が今も堂々とそびえ立ちます。

北部に広がるクーリー半島はアイルランド神話の舞台そのもの。古代叙事詩「クーリーの牛略奪(タイン・ボー・クアルンゲ)」に登場するこの地には、推定35トンの巨大な笠石を持つプロリーク・ドルメンなど先史時代の遺構も点在します。クーリー山脈の最高峰スリーヴ・フォイ(標高589メートル)からはカーリングフォード湾とモーン山脈の絶景を望むことができ、ハイキング愛好家を魅了します。

カーリングフォードの石畳の路地と中世の城壁が残る旧市街も必見です。クーリー蒸留所とグレートノーザン蒸留所はいずれもこの地で根付き、ラウスの風土が育むアイリッシュウイスキーの個性を体現しています。