ブナハーブン蒸留所(Bunnahabhain Distillery)|スコットランド・アイラのシングルモルトスコッチウイスキー蒸留所

ブナハーブン蒸留所は1881年、ブレンダーのウィリアム・ロバートソン(Robertson & Baxter社)とグリーンリース兄弟によってアイラ島北東部の辺境に設立された。蒸留所建設に際しては施設だけでなく労働者の住居や道路・専用桟橋の整備も含む大規模な投資が行われた。生産は1883年に開始し、1887年にはグレンロシスと合併してハイランド・ディスティラーズの創設母体となった。

アイラ島の他の蒸留所がピートヘビーなスタイルで名声を確立した中、ブナハーブンはより軽く潮感のある「ノンピート」スタイルを追求し「アイラの優しい巨人」と称されるようになった。1981年の一時閉鎖を経て1984年に再稼働。2003年にバーン・スチュワートが取得し、その後ディステルを経て2023年にCVHスピリッツが現オーナーとなっている。

マルガデール川の伏流水を地下からポンプアップして使用するという独自の水源を持ち、海岸沿いのダニッジウェアハウスでシェリーカスク主体の熟成が行われる。現在の年産能力は約330万リットル。2022年にはバイオマスエネルギーセンターが「Sustainable Development of the Year」賞を受賞するなど、サステナビリティへの取り組みでも注目を集めている。

特徴

アイラ島北東部の蒸留所。アイラの中では珍しくノンピートが基本スタイル。12年はシェリーカスク熟成のリッチで穏やかな味わいで人気。

基本情報

創業年 1881年
見学 不明
公式サイト https://www.bunnahabhain.com/

蒸留所情報

蒸留器数 4
主力ジャンル ウイスキースコッチウイスキー
主要ブランド ブナハーブン
ブナハーブン
Stiùireadair
Toiteach A Dhà

代表銘柄

所在地

イギリス

この地域について

スコットランド西部、インナー・ヘブリディーズ諸島の南端に浮かぶアイラ島は、本土アーガイルから約25kmの海峡を隔てた面積約620km²の島だ。人口わずか約3,000人のこの小島が「アイラスタイル」として世界に知られる独自のウイスキーを生む秘密は、島の大地に広がる特殊な泥炭(ピート)にある。海藻・海洋植物を含むアイラのピートは燃焼時にスモーキー・ヨード・磯の香りを放ち、大麦麦芽乾燥にこの煙を使うことで他に類を見ない個性が生まれる。現在10の蒸留所が稼働しており、各蒸留所のフェノール値はアードベッグ55ppm、ラフロイグ35ppm、ボウモア25ppmと個性はさまざまだ。

中世、アイラ島は「ロードシップ・オブ・ジ・アイルズ(Lordship of the Isles)」の中枢を担った。13〜15世紀にクラン・ドナルドの首長たちが拠点としたロッホ・フィンラガン(Loch Finlaggan)は、ヘブリディーズ諸島全体を支配する独立的な権力の座であり、湖内の評議会島ではスコットランドとアイルランドにまたがる広域議会が開かれた。新ロードの即位に際し戴冠石の上に裸足で立つ古式の儀礼が行われたこの聖地は「クラン・ドナルドの揺りかご」と呼ばれる。1493年にスコットランド王ジェームズ4世によりロードシップが廃止されるまで、アイラはゲール文化圏の政治・文化的中心地であり続けた。

8世紀に建てられたキルダルトン・クロス(Kildalton Cross)はスコットランドに現存する最も保存状態のよいケルト十字の一つで、アイルランドとアイラの深い文化的つながりを今に伝える。島北西部のRSPBロッホ・グルイナート自然保護区(約1,600ha)には世界のグリーンランドバーナクルグース個体数の約45%が越冬に訪れ、希少野鳥の宝庫としても知られる。毎年5月下旬に開催される「フェイシュ・イーレ(Fèis Ìle)」は世界中のウイスキーファンが集う巡礼の祭典で、各蒸留所が限定ボトルと特別体験を用意して島全体が沸き立つ。

1779年創業のボウモアをはじめ、1815年に同年創業したラフロイグとアードベッグを含む歴史ある蒸留所群が、アイラを単なる産地ではなく「ウイスキーの島」として世界に刻み込んでいる。