オルトモア蒸留所(Aultmore Distillery)|スコットランド・スペイサイドのスコッチウイスキー蒸留所

オルトモア蒸留所(Aultmore Distillery)は、スコットランド北東部スペイサイドのキース(Keith)近郊に位置する蒸留所だ。1895年に創業し、現在はバカルディ(Bacardi)傘下のジョン・デュワー&サンズ(John Dewar & Sons)が所有している。「ミスティ・モーランド(Misty Moorland)」のニックネームを持つオルトモアは、デュワーズ(Dewar’s)ブレンデッドスコッチの重要な原酒として知られる一方、近年は公式シングルモルトとしても積極的に展開されている。

スペイサイドらしいフルーティーで甘美なキャラクターに爽やかなハーブとミネラルのニュアンスが加わった、バランスの取れたモルトを産出する。キースはスコットランドのウイスキー産地の中心地に近く、良質な大麦と清冽な水に恵まれた好環境を誇る。

特徴

「ミスティ・モーランド(Misty Moorland)」の愛称で知られ、蒸留所を取り囲むFoggie Moss(フォギー・モス)と呼ばれる霧深い湿地帯が名前の由来とも言われる。スペイサイドらしい爽やかなフルーツとハーブのキャラクターに清潔感のあるミネラルが重なった、繊細でエレガントなモルトを生産している。

歴史

オルトモア蒸留所は1895年、著名なウイスキー実業家アレクサンダー・エドワード(Alexander Edward)によって設立された。エドワードはクレイゲラキ蒸留所やベンリネス蒸留所の創業にも関わった人物で、スペイサイドのウイスキー産業発展に大きく貢献した先駆者だ。蒸留所名は「オルト(Alt)=大きな」「モア(Mhor)=大地・荒野」というゲール語に由来し、周辺の霧深い湿地帯Foggie Mossの景観を体現している。

創業当初よりブレンデッドスコッチの原酒として高い評価を受け、20世紀を通じてハイランド・ディスティラーズ(Highland Distillers)など複数のオーナーのもとで操業を続けた。1998年にバカルディ(Bacardi)がデュワーズ(Dewar’s)ブランドとともにオルトモアを取得したことで、ジョン・デュワー&サンズのポートフォリオに組み込まれた。それ以来デュワーズブレンドの原酒供給と並行して、シングルモルトとしての展開が積極的に進められている。

2014年以降、ジョン・デュワー&サンズは「ラスト・グレート・モルツ(The Last Great Malts)」というブランディングのもと、アバフェルディ・アバリワー・クラゲンモアなど傘下蒸留所のシングルモルトを積極的に展開し始め、オルトモアもその中核の一つとして位置づけられた。近年は12年・18年・25年などの定番ラインナップが整備され、国際的なウイスキーコンテストでも評価を集めるブランドとして成長している。

基本情報

正式名称 Aultmore Distillery
創業年 1895年
操業状況 稼働中
所有会社 Bacardi(John Dewar & Sons)
見学 不可能
公式サイト https://www.aultmore.com/
Wikipedia Wikipedia

蒸留所情報

蒸留器数 ポットスチル4基
蒸留方式 ポットスチル蒸留
モルト使用 ノンピート
水源 Aultmore Burn(オルトモア・バーン)
熟成倉庫 ダンネージ式
年間生産量 約340万リットル/年
使用樽 エックス・バーボン(主体)、シェリー
主力ジャンル ウイスキースコッチウイスキー
主要ブランド オルトモア

代表銘柄

所在地

イギリス
都道府県州 Moray
住所 Aultmore, Keith AB55 6QY, UK
郵便番号 AB55 6QY

この地域について

スコットランド北東部、インヴァネスとアバディーンの間に横たわるスペイサイドは、全長172kmのスペイ川が灌漑する豊かな農業地帯だ。源流をモナドリアス山地のロッホ・スペイ(標高約300m)に持つスペイ川は、スコットランド第3の長さを誇り最も流れの速い川の一つで、ケアンゴームズ国立公園を抜けてモーレイ・ファース(Moray Firth)へと注ぐ。川が育む軟水とミネラルバランス、周辺農地の良質な大麦、ケアンゴームの泥炭——この三拍子が世界最高密度のウイスキー産地を形成した背景にある。スペイ川はまた「スペイキャスト」と呼ばれる独自のフライフィッシング技法の発祥地として知られ、サーモン釣りを求める世界中のアングラーを引き付ける英国随一の鮭川でもある。

1823年の消費税法(Excise Act)成立が密造横行の時代に終止符を打ち、翌1824年にジョージ・スミスがグレン・リヴェット渓谷で最初の合法免許を取得。モダン・スコッチ産業の礎を築いた。19世紀後半にグレート・ノース鉄道がスペイサイドに開通すると大麦・石炭・樽の輸送が一気に整い、各地で蒸留所創業ラッシュが起きた。現在も稼働する蒸留所はストラスアイラ(1786年創業・スコットランド最古の連続稼働蒸留所)からダフタウン、アベラワー、クレイゲラキまで50以上が密集し、2009年のスコッチウイスキー規則でスペイサイドが独立産地として正式認定された。

スペイ川岸に建つ16世紀のバリンダロッホ城(Ballindalloch Castle)はマクファーソン=グラント家が数百年にわたり居住し続ける生きた史跡だ。全長116kmのスペイサイド・ウェイはモーレイ湾の港町バッキーからケアンゴームズの奥地まで続くロング・ディスタンス・ウォーキングルートで、沿道には蒸留所見学スポットが点在する。英国唯一の現役樽職人工房スペイサイド・クーパレッジや7蒸留所を巡るモルトウイスキー・トレイル(全長99km)は、毎年5月に開催される「スピリット・オブ・スペイサイド・ウイスキー・フェスティバル」と合わせて54カ国以上のウイスキーファンを呼び込む。

現在スコットランド全体のシングルモルトの約50〜60%がスペイサイド産であり、世界で最も売れる2大シングルモルト——グレンリベットとグレンフィディック——がともにこの地に根を持つことが、スペイサイドを「ウイスキーの聖地」たらしめている。