吉乃川 厳選辛口は、新潟県長岡市の吉乃川株式会社が醸す新潟淡麗辛口の代表格である。吉乃川の創業は天文17年(1548年)——上杉謙信が春日山城に入城した年と同じであり、新潟県内最古の酒蔵にして全国でも十指に入る老舗だ。屋号は「和泉屋」「中越醸造」「中越酒造」と変遷し、昭和48年(1973年)に現在の「吉乃川」に改称した。蔵名の由来は、十五代当主の母「享寿(よし)」と酒の母なる「信濃川」にちなんでいる。
仕込み水は蔵の敷地内に湧く地下水「天下甘露泉」を使用する。日本一の大河・信濃川の伏流水と背後の東山連峰からの雪解け水が地中で交わり湧出するこの水は、飲み飽きしないさらりとした口当たりを生み出す。2021年には大正時代の蔵を改装した酒ミュージアム「醸蔵(じょうぐら)」を開設し、試飲・見学・クラフトブルワリーを備えた観光拠点としても注目を集めている。
厳選辛口は新潟県産五百万石を精米歩合65%に磨き、日本酒度+7という確かな辛口に仕上げた普通酒である。麹造りの段階から徹底して辛口を追求しながら、雑味が少なく米の旨みが穏やかに底支えする「新潟淡麗辛口の教科書」ともいうべき一本だ。発売から30年以上にわたり吉乃川の代表銘柄として愛され続けている。全国燗酒コンテスト2016では金賞を受賞しており、冷や・常温・燗と幅広い温度帯で楽しめる汎用性の高さも特長。食事の味を邪魔しない理想的な食中酒として、地元長岡はもちろん全国のファンから支持されている。
テイスティングノート
香り
控えめでクリーンな香り。天下甘露泉の軟水由来の清冽さが感じられ、米のほのかな甘い香りがベースにある。派手さはなく、食中酒としての繊細さと品格を予感させる香り立ち。
味わい
口に含むとスッキリとした清廉な甘みが一瞬広がり、その後キレよく消えていく。日本酒度+7の辛口設計だが、五百万石の米の旨みが穏やかに底支えし、単なるドライではなくバランスのとれた味わい。喉越しがよく「水のように飲める」とも評される。燗にすると苦味が出ず、ふくよかな米の旨みが開花する。
余韻
後味は極めてクリーンで短く切れる。海鮮料理の脂をすっきりリセットする爽快感があり、あらゆる和食と万能に合う食中酒の鑑。
酒
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