産土 穂増 四農醸は、江戸時代の肥後国(現・熊本県)で「天下第一の米」と称された在来種「穂増(ほませ)」を使い、農醸十二階位のうち四要素(菊池川流域産米・無農薬・無肥料・生酛)を満たした純米酒だ。1830年代には大阪堂島米会所で最高値を記録した伝説的な米が、2017年にわずか40粒の種籾から復活し、花の香酒造の手で日本酒へと生まれ変わった。
穂増という米の伝説
穂増(ほませ)は1833年頃に熊本県で種取りされ、肥後国を中心に九州一円で盛んに栽培されてきた江戸時代の高級米だ。「お日様の香り」と形容されるほのかな甘みと香りが特徴で、噛むほどに甘みが引き出される食米としての評価が圧倒的に高かった。江戸末期には大阪堂島米会所で「天下第一の米」として他の産地の米を圧倒する最高値を記録した歴史を持つ。
明治以降に姿を消したこの品種を、花の香酒造は2017年にわずか40粒の種籾から復活栽培に成功。現在は菊池川流域の農家と協力して無農薬・無肥料で育てており、産土穂増シリーズの原料として毎年限定的に仕込まれている。
四農醸の製法
四農醸は、菊池川流域での自然栽培(無農薬・無肥料)で育てた穂増を、生酛仕込みで醸す。生酛は現代の速醸酛に比べて数週間多くの時間を要する古来の製法で、乳酸菌が自然発生するまで蔵の微生物環境に酒母を委ねる。この工程が、穂増の持つ旨みと複雑さをより深く引き出す土台を作る。
産土穂増ラインのエントリーグレードにあたる四農醸は、穂増の「華やかさ」が最もわかりやすく表れる一本だ。木桶醸造や酵母無添加を加えた上位グレードと比べると、熊本9号酵母の個性がより前面に出た明るい飲み口が楽しめる。
テイスティングノート
香り:バナナやパインを思わせる華やかで果実的な香りが第一印象を作る。熊本9号酵母由来の明るいエステル香に、穂増特有の穀物的な温かみが重なる。生酛由来の乳酸の爽やかなニュアンスが後から顔を出し、香りに清潔な奥行きを加える。
味わい:やや甘口で、果実的な旨みが口に広がる。口当たりはなめらかで、穂増の持つきめ細かな旨み成分が溶け込んだ「とろみ」を感じる。阿蘇の火山性土壌が浄化した地下水の豊かな水質が、穂増の旨みをやさしく包む。ミドルパレットで生酛由来の乳酸の酸がバランスを取り、甘みが膨れ上がらないよう引き締める。
余韻:余韻は中〜長めで、微生物の多様性が生んだ複雑なニュアンスが口内にとどまる。フィニッシュに向けて穀物的な旨みが増し、ほのかな苦みが心地よく締めくくる。
飲み方
雪冷え(5℃前後)から涼冷え(15℃前後)がおすすめ。白身魚の刺身やカルパッチョ、鶏肉の白和えなど淡白な料理との相性が良く、穂増のバナナ・パイン的な香りとの組み合わせが食卓に華やかさを添える。
酒
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