タイタニック・ディスティラーズのポンプハウス・シリーズは、蒸留所が立地するトンプソン・ドックのポンプハウスという歴史的建造物からその名を取った限定リリースコレクションだ。第1弾である「07ST」は7年熟成のダブルディスティルド・シングルモルトをテラ・ノクターン・インペリアル・スタウト樽でフィニッシュした1000本限定の稀少な一本として、2024年に発表された。
ポンプハウス・シリーズのコンセプトは、ベルファストの造船・産業の歴史とアイリッシュウイスキーの伝統を掛け合わせることにある。「07ST」の名称はトンプソン・ドック(Thompson Dock)の識別番号に由来し、RMSタイタニックが建造されたこの場所への敬意を込めている。ボトルデザインには造船所のエンジニアリング図面を思わせる精緻なラインが施され、コレクターズ・エディションとしての特別感を演出している。
インペリアル・スタウトのカスク・フィニッシュというアプローチは、アイリッシュウイスキーの世界でも稀有な試みだ。スタウトビール樽のロースト麦芽、ダークチョコレート、コーヒーの風味がシングルモルトの甘みと融合し、他では体験できないユニークな味わいのプロファイルが生み出されている。このフィニッシュ手法はベルファストのクラフトビール文化とウイスキー文化を橋渡しする象徴的な選択でもある。
セット商品としてインペリアル・スタウトのボトルと共に提供されており、ウイスキーとビールを並べてテイスティングすることで双方の風味のつながりを体感できる。北アイルランドの地産地消と地域産業の協力関係を体現したコンセプトは、業界内外から高い評価を得ている。限定1000本という希少性もあって発売直後に完売に近い状況となった。
ポンプハウス・シリーズはタイタニック・ディスティラーズのラインナップにおける最高峰であり、クラフト蒸留所としての実力と創造性を最も雄弁に示している。プレミアム・ブレンドや5年ポットスチルが入門的な立場にあるのに対し、このシリーズは本格的なウイスキー愛好家をターゲットにした意欲作だ。
限定リリースということもあり、愛好家コミュニティでは発売前から大きな話題を呼んだ。シングルモルト・スノブや複数のアイリッシュウイスキー専門ブログでは「ベルクのような力強い甘みとビターなコーヒー、チョコレートが融合した予想外の複雑さ」と称賛されており、北アイルランドのクラフトウイスキーシーンの成熟度を示す一例として挙げられている。
テイスティングノート
香り
ロースト麦芽とダークチョコレートの香りが印象的で、そこに7年熟成ならではのバニラとトースティーなオークがベースとして広がる。インペリアル・スタウト由来のコーヒーの苦みがアクセントとなり、複雑で魅力的なアロマを構成する。
味わい
ヴェルベットのような滑らかさから始まり、ダークチョコレート、エスプレッソ、インペリアル・スタウトの風味が重なり合う。奥からはフルーツのジャミーさとヘーゼルナッツのリッチさが顔を出し、クリームのように甘い余韻へとつながっていく。
余韻
コーヒーとホットチョコレートのロングフィニッシュが続き、オークのタンニンが静かに支える。甘苦いビタースイートの余韻が長く持続し、飲み終えた後も豊かな満足感を与える。
酒
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