〆張鶴 花は、新潟県村上市の宮尾酒造が醸す看板銘柄「〆張鶴」の普通酒である。宮尾酒造は文政2年(1819年)、屋号「大関屋」として創業した200年超の歴史を持つ老舗酒蔵だ。銘柄名「〆張鶴」は、神聖な酒に〆縄を張る神道文化的慣習と、めでたい鶴のイメージを組み合わせたもので、創業当初の銘柄「若鶴」から後に改名された。創業期には北前船による海運業も兼業しており、当時の航海図や古文書が蔵に現存している。
蔵は鮭の遡上で名高い三面川(みおもてがわ)の伏流水を仕込み水として使用する。この水は軟水で、ほのかな甘みを持ち、淡麗でなめらかな新潟酒の骨格を生む。原料米には五百万石を使用し、精米歩合60%まで磨き上げる。普通酒でありながらこの精米歩合は本醸造クラスに匹敵する丁寧な造りであり、〆張鶴の品質に対する妥協のない姿勢を物語っている。
〆張鶴全体のコンセプトは「淡麗旨口(たんれいうまくち)」。単なる淡麗辛口にとどまらず、米本来の旨みとのバランスを徹底的に追求する。花は新潟県内限定流通という稀少性もあり、地元の食卓に寄り添う「毎日の相棒」として長年にわたり愛され続けている。宮尾酒造は蔵と特約店の直接的な信頼関係を重視し、流通を厳選することで品質管理を徹底している。「酒屋・飲み手・蔵の三者間の信頼を何より大切にする」という経営哲学は、〆張鶴ブランド全体の格式と信頼性の土台となっている。代々受け継がれてきた「秘法之巻」と呼ばれる醸造技術のバイブルを守りながら、品質最優先の姿勢を貫く蔵の精神が、この一本にも凝縮されている。
テイスティングノート
香り
穏やかで控えめな米の香り。押しつけがましさが一切なく、日本酒としての品格を感じさせる清楚な香り立ち。三面川の軟水由来の柔らかさが香りにも反映されており、食中酒としての繊細さを予感させる。
味わい
軽やかでクリーンな口当たり。五百万石特有のすっきりとしたキレと、新潟酒らしい淡麗な味わいが広がる。日本酒度+4のやや辛口ながら、軟水仕込みならではのほのかな甘みが奥行きを与える。後味はさわやかに切れ、料理の繊細な味わいを邪魔しない。冷やでもお燗でも美味しく、燗にすると米の旨みがふくよかに広がる。
余韻
後味は短くさわやか。雑味のない透明感のある余韻が心地よく、次の一杯を自然に誘う。飲み飽きしない設計が毎日の食卓酒として完璧な一本に仕上げている。
酒
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