箕面ビールは1997年、大下正司が大阪府箕面市に創業したクラフトブルワリーだ。創業の動機は明確で、「出汁を中心とした大阪の料理に合うビールを造りたい」という思いだった。繊細な旨味と風味を大切にする大阪の食文化と相性のよいビールを追求する中で生まれたのが、焙煎モルトを軸にしたスタウトというスタイルだった。その後2012年に大下正司が逝去し、工場長として醸造責任者を務めていた長女の大下香緒里が代表を引き継いだ。創業者の意志と醸造哲学を受け継ぎながら、現在も「日常の食卓に合うクラフトビール」という原点を大切に醸造を続けている。
スタウトは箕面ビールのフラッグシップ商品であり、国際的な評価という面で同社の名を世界に知らしめた一本だ。2009年と2014年のWorld Beer Award世界金賞、2013年のInternational Brewing Awards銅賞、2016年のWorld Beer Cup金賞など、これまでに世界のコンクールで8度の金賞を受賞している。アルコール度数5.5%というスタウトとしては比較的軽めの設定は意図的なもので、コーヒーやビタースイートチョコレートを思わせる焙煎の風味を持ちながらも、ドライで飲み飽きない仕上がりを実現している。この「重厚さと飲みやすさの両立」こそが同ビールが世界で高く評価される核心だ。
スタウトというスタイルはアイルランドのギネスが世界的なイメージを形成しているが、箕面ビールのスタウトはそれとは一線を画す日本独自のアプローチを取っている。出汁料理との相性を念頭に置いた滑らかでクリーミーな口当たりと、後味のドライな切れ味は、アイリッシュスタウトのビター感とも、インペリアルスタウトの重厚さとも異なる独自の立ち位置を確立した。大阪という土地の食文化が生んだ「何杯でも飲みたくなる黒ビール」というコンセプトは、スタウトの可能性を日本的な文脈で再定義したものとして、国内外のビール愛好家から高く評価されている。
テイスティングノート
香り
焙煎モルト由来のコーヒーとビタースイートチョコレートの香りが深く立ち上がり、ロースト香の中にほのかなバニラのような甘さが漂う。
味わい
滑らかでクリーミーな口当たりに焙煎の苦みが重なり、しっかりとしたボディが舌全体を包む。重さを感じさせないドライな飲み口が特徴的。
余韻
ロースト由来の苦みがすっきりと消えていくドライな後口。余韻は短く切れがよく、次の一杯を自然に手に取らせる軽快な終わりを見せる。
酒
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