麒麟山 超辛口は、新潟県東蒲原郡阿賀町の麒麟山酒造が醸す、極限の辛口を追求した普通酒である。麒麟山酒造は天保14年(1843年)創業。木炭販売業から始まり、二代目・齋藤吉平の代に本格的な酒造業へ転換した。創業当初は「福の井」を名乗っていたが、明治15年(1882年)に「麒麟山」に改称。五代目当主・齋藤徳男から受け継がれる「酒とは辛いもの」という信念が蔵の根幹をなしている。
蔵が位置する阿賀町は面積の94%が森林に覆われた山深い地域で、福島県境に接する奥阿賀と呼ばれる一帯である。仕込み水は常浪川(じょうなんがわ)の伏流水を使用する。ミネラル分の少ない軟水で、山の雪が広葉樹の落葉が作る自然のフィルターを通って湧き出すことで極上の軟水が生まれる。この水が発酵をゆっくり進め、きめ細やかでスッキリした仕上がりを実現する。さらに麒麟山酒造は全国でも稀有な取り組みとして、阿賀町津川から半径10km以内で栽培した奥阿賀産酒米100%を使用。先代社長が1988年頃から始め、1995年に「奥阿賀酒米研究会」が発足し、実現まで約30年を要した地域密着型の酒造りだ。
超辛口は日本酒度+12という新潟県内でもトップクラスの辛さを誇る。同蔵の定番「伝統辛口(伝辛)」が日本酒度+6であるのに対し、超辛口はその倍の辛さを実現している。しかし単なるドライではなく、奥阿賀の軟水が生むきめ細やかさと、地元産米の旨みがかすかに底支えすることで、キレの鋭さと飲みやすさを両立している。「その土地のお米と水で醸し、その土地の人の日々の生活に寄り添う酒」という地酒哲学を極限まで研ぎ澄ませた一本である。
テイスティングノート
香り
香りは極めて抑制的で品よく整っている。派手な吟醸香はなく、米のわずかな甘い香りが控えめに漂う程度。食事の邪魔をしないことを最優先にした設計で、料理の香りを引き立てる静かな存在感。
味わい
口に含むと水のような透明感が最初に来て、次第に米の旨味がほんのりと広がる。しかしそれは一瞬で、日本酒度+12の辛さのキレが速やかに口中を清潔に拭い去る。伝統辛口の「辛さの中に旨味がある」設計に対して、超辛口は辛口の純化・洗練を極めた味わい。冬場は熱燗(55度前後)でさらに味が開花する。
余韻
後味は極めてドライで余韻が短い分、次の一口・次の料理へとスムーズにつながる。魚料理、寿司、塩系の肴との相性が抜群で、「食中酒の理想形」と評される。
酒
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