スコットランド・フィフ半島のセントアンドリュース近郊に位置するキングスバーンズ蒸留所は、2014年にダグラス・クレメントによって設立され、2015年から蒸留を開始したローランド地方を代表する新興蒸留所だ。元々は穀物倉庫だった農場建築を改装した施設で、世界的なゴルフの聖地セントアンドリュースのすぐそばという立地も話題を集めた。フィフ地方3つの農場から調達したコンコルトバーレイ(大麦)のみを使用し、地産地消を徹底している点が大きな特徴だ。
ドリーム・トゥ・ドラム(Dream to Dram)は2020年にリリースされたキングスバーンズ蒸留所の最初の一般向け商品であり、看板商品としての位置づけを持つ。「夢をひと口に」というロマンティックな命名は、地元フィフの人々が長い年月の夢として蒸留所復活を願い続けてきた歴史と、そのウイスキーを実際に味わう感動の瞬間を掛け合わせた言葉だ。ウイスキーコンサルタントの第一人者であり2017年に逝去した故ジム・スワン博士が初期の木材政策と熟成戦略を立案し、そのレガシーが今もすべてのボトルに息づいている。
熟成にはファーストフィル・バーボンバレルと、ファーストフィル・STR(シェーブド・トースト・リチャー)元ポルトガル産赤ワイン樽の2種類を使用。STRはジム・スワンが得意とした技法であり、赤ワイン樽を再加工することで新樽に近い活性度でフルーティーかつ複雑な風味を引き出す手法だ。46%ABV・ノン・チルフィルタリング・無着色でボトリングされ、ローランドウイスキー特有の軽やかさを最大限に表現している。
国際的な品評会での評価も高い。IWSC(インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション)2022では96ポイントのゴールドメダルを獲得。さらに同年のワールド・ウイスキー・アワード(WWA)では「ベスト・スコッチ・ローランドシングルモルト」部門の最高評価を受け、ローランドウイスキーの新たな旗手として世界に名乗りを上げた。輪郭のはっきりした南ハイランドやアイラとは対照的な、軽快でフルーティーなローランドスタイルの素晴らしい体現として専門誌が一致して称賛している。
テイスティングノート
香り
バナナとパイナップルシロップの甘やかなトロピカルフルーツ香が最初に広がり、続いてサマーベリー(ストロベリー・ラズベリー)の爽やかな果実感が重なる。バニラと淡いフローラルノートが全体を包み、ローランドモルトらしい清潔感ある香り立ちが印象的だ。STR樽由来のほのかな赤ワインニュアンスが奥底に感じられる。
味わい
口当たりはなめらかでシルキー。タフィー(キャラメルソフトキャンディー)とカスタードパイの甘さが広がり、レッドカラントの軽やかな酸味が加わって明るいフルーツキャラクターを演出する。中盤にはSTR樽由来のほんのりとしたオーキースパイスとシナモンのニュアンスが現れ、フィニッシュに向けてジンジャーシロップのような温もりが広がっていく。
余韻
中程度のフィニッシュ。ジンジャーと淡いスパイスが柔らかく続き、フレッシュな洋梨とアップルの後味がクリーンに消えていく。ローランドらしい清潔でエレガントな余韻は重くなく、次の一杯を誘う軽快さが魅力だ。長い時間をかけて徐々に甘みが戻り、最後にバニラとビスケットの余韻が静かに締めくくる。
酒
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