賀茂鶴 上等酒は、広島県東広島市西条の賀茂鶴酒造が醸す本醸造酒である。賀茂鶴酒造は明治6年(1873年)創業。地名「賀茂」と気高さを象徴する「鶴」を組み合わせて命名された。西条は兵庫・灘、京都・伏見と並ぶ日本三大酒処のひとつであり、標高400〜700mの山々に囲まれた盆地地形が冬場の仕込みに最適な4〜5度の気温をもたらし、中国山地から滲み出る賀茂山系の天然伏流井水が恵まれた醸造環境を形成している。
この仕込み水は典型的な軟水で、かつては発酵力が弱く酒造りに不向きとされていた。しかし明治31年(1898年)、広島の酒造家・三浦仙三郎が「軟水醸造法」を開発したことで状況が一変する。軟水の特性を活かした広島の酒が全国に広まり、西条は銘醸地としての名声を確立した。賀茂鶴はその伝統の中心にある蔵であり、昭和33年(1958年)に金箔入り大吟醸「特製ゴールド賀茂鶴」を発売して全国的な知名度を獲得した。
2014年、オバマ米大統領(当時)の来日時、安倍晋三首相との夕食会の場となった銀座の名店「すきやばし次郎」で振る舞われた日本酒が「特製ゴールド賀茂鶴」であった。この外交の舞台に選ばれた事実は世界中に報じられ、賀茂鶴の名は国際的にも広く知られることとなった。賀茂鶴とすきやばし次郎の関係は1965年頃から50年以上続く正統な信頼関係である。上等酒は大吟醸とは異なる本醸造ラインだが、同じ蔵の哲学と品質基準のもとで醸される日常の一本として、西条の軟水が生むふくよかでなめらかな広島酒の真髄を伝えている。
テイスティングノート
香り
穏やかですっきりとした香り。派手さはないが、米のほのかな甘い香りと賀茂山系の軟水由来の柔らかさが感じられる。食中酒としての品格を備えた控えめな香り立ち。
味わい
口に含むと柔らかな甘みとしっかりとした米の旨みが広がる。西条の軟水で仕込んだ広島酒らしい、ふくよかでなめらかな飲み口が特長。日本酒度+1.5とほぼ中間の設計で、辛口に寄りすぎず甘口にも傾きすぎない絶妙なバランス。冷やすと穀物の香りが引き締まり洗練された旨辛さに、燗では旨みがぐっと開いてご飯との相性が増す。
余韻
柔らかさが持続する穏やかな余韻。後口に軽い辛さが残りつつも、全体としてはまろやかで飲み疲れしない。「広島ではスーパーにも置いてある万人向けの飲みやすいお酒」と地元での愛着も深い。
酒
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