初孫 魔斬(まきり)は、山形県酒田市に蔵を構える東北銘醸が醸す、生酛造り一筋の蔵が送り出す辛口純米酒の傑作である。東北銘醸は明治26年(1893年)創業。創業以来130年以上にわたり一度も速醸酵母法に切り替えず、伝統的な「生酛造り(きもとづくり)」一筋を貫いてきた。生酛造りとは、水・米・米麹を擂り合わせて酒母を育てる古典的な手法で、天然の乳酸菌が自然に繁殖するのを待ちながら安全な発酵環境を整えていく。
「魔斬(まきり)」は、酒田の地で昔から漁師が持ち歩いた小刀に由来する名前だ。魔除けの縁起物として愛されたこの小刀のように、「切れ味が鋭く邪気を払う」辛口の酒として命名された。原料米には山形県産の美山錦を用い、精米歩合55%に磨いたうえで生酛の酒母から丁寧に仕込む。日本酒度+8の辛口設計でありながら、生酛由来の乳酸が生み出す深いコクと旨味のおかげで立体的な味わいを実現している。
酒田は江戸時代から北前船の寄港地として栄えた湊町で、各地の食文化が集まるこの地で鍛えられた「食事に合う辛口の酒」という伝統が今に息づいている。冷酒ではキリッとしたキレが前面に出て刺身・寿司との相性が際立ち、ぬる燗では旨味が膨らんで煮物や焼き魚と見事に調和する。IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)では3年連続第1位を獲得するなど国際的な評価も高く、生酛造りの実力を世界に証明している。
テイスティングノート
香り
ほのかなヨーグルト・乳酸系の落ち着いた香り。生酛由来の穏やかな酸の香りに、華やかさより深みを感じさせる素朴な米の香りが重なる。
味わい
辛口の中にも生酛特有の深いコクと旨味が広がる。乳酸の強さが骨格を形成しつつ重すぎない。滑らかに広がってからスパッと切れる二段構えの味わい。
余韻
キレ味が抜群で後口はすっきりドライ。余韻に生酛らしい乳酸の爽やかさが微かに残る。燗にすると旨味がより膨らむ。
酒
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