獺祭 純米大吟醸 磨き三割九分は、山口県岩国市に蔵を構える旭酒造株式会社が醸す獺祭シリーズのスタンダード純米大吟醸だ。山田錦を精米歩合39%まで磨き上げた純米大吟醸であり、獺祭ラインナップの中でも最もバランスのとれたコストパフォーマンスを誇る銘柄として世界中の愛好家に親しまれている。
旭酒造の桜井博志会長(創業4代目)は1984年に経営危機に瀕した蔵を引き受け、「杜氏に頼らない、データと技術で再現性のある最高の酒を造る」という革命的な方針を打ち出した。杜氏制度を廃止し、醸造データの徹底的な分析と温度管理によって四季醸造を実現。山口という辺鄙な立地のハンデを、品質への徹底したこだわりで覆した。
「獺祭」という名は、カワウソ(獺)が捕った魚を岸に並べる習性「獺祭り」に由来し、転じて詩人が詩を作る際に多くの書物を周囲に広げる様を意味するようにもなった。正岡子規がこの言葉を愛したことでも知られ、学究的な姿勢で酒造りに向き合う旭酒造の精神が銘柄名に体現されている。
獺祭は1990年代以降、吟醸酒ブームの波に乗り全国的な知名度を獲得し始めた。2010年代には海外輸出が急拡大し、パリの三ツ星レストランのソムリエが激賞したことで欧州での地位が確立。2023年にはニューヨーク州に海外初の製造拠点「DASSAI BLUE SAKE BREWERY」を稼働させ、日本酒の海外生産という新たなステージへ踏み出した。
磨き三割九分は獺祭の中でスタンダードな純米大吟醸として位置づけられ、より高精米の「磨き二割三分」「磨き その先へ」の下に位置する入門ラインだ。しかし39%という精米歩合は一般的な大吟醸基準(50%以下)を大幅に上回るものであり、「スタンダード」という表現が価格以上の品質を示している。
IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)SAKE部門では獺祭シリーズが継続的に金メダルを受賞しており、2025年にも「磨き二割三分」がゴールドを獲得した。日本酒の輸出額が2022年に史上初めて500億円を超えた中で、獺祭は日本酒の国際化をリードするブランドとして30ヶ国以上への輸出実績を持ち、日本酒業界の発展に多大な貢献を果たしている。
テイスティングノート
香り
メロン・白桃・ライチを思わせる華やかで上品な吟醸香が主体。蜂蜜のような柔らかい甘みの香りが後に続き、米の旨みの繊細な香りが全体を包む。清潔感があり、日本酒特有の雑味がない、純粋な大吟醸の香りだ。
味わい
きめ細かくシルキーな口当たりで、蜂蜜のような甘みがふわっと広がる。上品な旨みとほんのりとした酸味が調和し、全体として非常にまろやかでクリーンなフレーバー。やや辛口の後半でスッキリとした印象をもたらす。
余韻
長くやさしい余韻。甘みと旨みが静かに溶け込みながら、清涼感のある後口がさらっと続く。最後には米の香ばしさとほんのり残る蜂蜜の甘みがフェードアウトし、もう一杯飲みたくなる上品な余韻だ。
酒
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