コエドビール「紅赤」の誕生は、埼玉県川越市という土地との深い結びつきに根ざしている。コエドブルワリーの前身となる協同商事は1996年に酒類製造免許を取得し、地域の農産物を活用したビール醸造に取り組み始めた。川越は「小江戸」として知られる歴史的な街であり、特産品として江戸時代から受け継がれてきたさつまいも「武州小江戸川越金時薩摩芋 紅赤(べにあか)」がある。この地域固有の食材をビールに使うという発想は、まさにワインにおける「テロワール」の概念をビールに持ち込んだ先駆的な試みだった。
「さつまいもをビールの原料にする」という手法は、コエドが世界で初めて実践したとされる。開発にあたって最も苦労したのは、さつまいもの糖分をいかにビールに活かすかというプロセスだった。最終的に採用された手法は「焼き芋加工」で、遠赤外線でさつまいもをじっくりと焼き上げることで糖分がカラメル化し、余分な水分が飛ぶことで豊潤な風味が引き出される。この工程がビール醸造に取り込まれることで、麦芽だけでは生み出せないまろやかな甘みと深みのある色調が実現している。ブランド名「紅赤」は使用するさつまいもの品種名にそのまま由来し、素材への敬意が名前にも直接反映されている。
2006年に「COEDO(コエド)」ブランドとして整備された現在のラインナップの中で、「紅赤」は最初から存在していた原点的な銘柄だ。アルコール度数7.0%というレギュラーラインで最も高い強度は、さつまいも由来の豊かな発酵糖分を反映したものであり、飲み応えと複雑さの両立を目指した設計となっている。川越の土地・歴史・農業が一体となったこのビールは、日本のクラフトビール市場において「地域性(ローカリティ)」の重要性を早期から提示したパイオニア的存在として評価されている。
テイスティングノート
香り
焼き芋を思わせるカラメルの甘い香りと麦芽の香ばしさが溶け合い、琥珀色の外観と相まって豊潤で温かみのある印象を与える。
味わい
さつまいも由来のまろやかな甘みが麦芽のコクと一体となり、リッチでふくよかな飲み口が広がる。甘さの中にもしっかりとした骨格がある。
余韻
甘みが徐々に引いていき、麦芽のほのかな苦味がすっきりと後口を整える。余韻は長く、ゆっくりと向き合いたくなる奥行きを残す。
酒
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