新政 陽乃鳥(ひのとり)は、秋田県秋田市の新政酒造が手がける貴醸酒(きじょうしゅ)である。「貴醸酒」は1973年に国税庁醸造試験所が平安時代の古文書「延喜式」に記された醸造法をもとに開発した製法で、仕込みの水の一部を清酒で置き換えることで通常では到達できない濃厚な甘みと複雑性を生み出す。
新政の陽乃鳥が特異なのは、追醸に使う清酒をあらかじめ1年間ミズナラ樽に入れて熟成させている点だ。ミズナラ由来のバニラ様の甘い香りがベースの酒に移り、ただ甘いだけでない複雑な香味を実現している。この手法はバーボンウィスキーの熟成を想起させるとして、日本酒とウィスキーの境界を超えた新しい酒の在り方として注目された。
名称の由来にも逸話がある。かつて「茜孔雀(あかねくじゃく)」として販売されていたこの酒は、奈良県の油長酒造(風の森)が「陽乃鳥」の商標を保有していた経緯から商標問題が浮上。油長酒造の山本長兵衛氏の好意により商標を譲り受け、「陽乃鳥」の名称で再デビューした。このエピソードは日本酒業界の義侠的な人間関係を示す逸話としてよく語られる。
SAKETIMEでは4.58/5.0という驚異的なスコアで秋田県日本酒1位・全国2位を獲得。新政ラインナップの中で最も高い満足度を誇る異色の存在だ。食後酒・デザート酒として、チョコレートやベリー系スイーツとの相性は格別である。
テイスティングノート
香り
マンゴー・パイナップルのようなトロピカルフルーツ香。ミズナラ由来のバニラ様の甘い香りが重なり、濃密ながら品のある複雑なアロマを形成する。
味わい
とろりとした舌触りに、マンゴーを思わせる濃密な甘みとパイナップルのような甘酸っぱい酸が共存。貴醸酒としては異例のキレと清潔感を持ち、甘さが重くなりすぎない。
余韻
濃厚で長い余韻。甘みが静かにフェードアウトしていく上品なフィニッシュ。食後にゆっくりと味わいたい一本。
酒
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