五十嵐酒造(埼玉県飯能市)が、特定の特約店「細野商店」のために醸した特注品が「五十嵐 山廃 細野商店」だ。山廃仕込みという伝統的な醸造手法を採用し、北海道産の酒造好適米「五百万石」を60%精米して醸された純米酒。K1001号酵母(協会1001号)を使用した山廃仕込みにより、乳酸の複雑な酸味と独特の野趣ある旨味が生まれている。アルコール度数16%・日本酒度+4・酸度1.9という数値は、力強くドライな仕上がりを示している。
山廃仕込みは、昔ながらの「山卸廃止醸造法」の略称で、米をすり潰す「山卸」作業を省略しながら自然の乳酸菌を活用して酒母を育てる技術だ。このプロセスでは自然の乳酸菌が複雑な有機酸を生成するため、一般的な速醸系酒母では得られない深みのある酸味と旨味が生まれる。K1001号酵母は速醸系の中でも発酵力が安定しており、山廃特有の複雑な酸を活かしながら安定した品質を維持するために採用されている。「五百万石」は新潟県原産の酒造好適米で、北海道でも広く栽培されており、スッキリした淡麗辛口の酒造りに適した品種だ。
「細野商店」向けの特注品という設定が、この銘柄に特別な物語を与えている。五十嵐酒造が特定の販売先との信頼関係のもとで醸す特注品は、通常の「五十嵐」ラインナップとは一線を画した希少性を持つ。山廃仕込みは五十嵐酒造の醸造技術の幅広さを示す一本であり、近年増加している山廃・生酛ブームの中で注目を集めている。五十嵐酒造は明治30年(1897年)創業の老舗蔵として、伝統的な醸造技術と現代的な吟醸酒造りの両方を高水準で実践していることが評価されている。
テイスティングノート
香り
山廃仕込み特有の複雑な発酵香と、五百万石の穏やかな米の香りが融合する。乳酸系の旨みを連想させる落ち着きのある香りの中に、K1001号酵母由来のすっきりした清涼感が感じられる。
味わい
口に含むと山廃仕込みによる複雑で力強い旨味が広がる。乳酸の豊かな酸が骨格を形成し、日本酒度+4の辛口とのバランスが絶妙だ。16%の高アルコールが旨味を後押しし、ボリューム感ある飲み応えを提供する。五百万石の淡麗な特性が旨味を引き締め、くどさのないクリーンな山廃の味わいを作り出している。
余韻
余韻は長く、山廃特有の複雑な酸と旨味がゆっくりと消えていく。ドライなキレの中にも厚みのある後味が残り、飲み飽きしない満足感がある。肉料理や発酵食品との相性が特に優れた骨格のある余韻だ。
酒
💬0