五十嵐酒造(埼玉県飯能市)の特約店限定直汲みシリーズ「五十嵐」の中で、地元埼玉へのこだわりを最も色濃く表現したのがこの「純米酒六三四 無濾過生原酒 直汲み」だ。「六三四」(むさし)という銘柄名は、埼玉県が誇る地場の酒造好適米「さけ武蔵」を使用していることに由来し、埼玉・武蔵野の風土を一本の酒に体現するというコンセプトを持つ。さけ武蔵を60%精米し、無濾過・生・原酒の状態で直汲みした本品は、米の旨味を余すところなく引き出した純米酒の醍醐味を楽しめる一本だ。
「さけ武蔵」は埼玉県農業技術研究センターが2000年代に開発した埼玉県独自の酒造好適米で、心白の発現率が高く、飯米に比べてタンパク質含量が低いという特性を持つ。山田錦のような淡麗な酒質を目指して育種された品種であり、埼玉県内の酒蔵がこぞって使用する県産米だ。五十嵐酒造はこの地元産米に奥秩父の天然地下水を合わせることで、土地の味わいが直接感じられる「地酒」の本来の姿を追求している。日本酒度+4、酸度1.9というスペックは、旨味と酸のバランスが取れた食中酒に適した設計だ。
「五十嵐」ブランドは特約店限定・数量限定の直汲みシリーズとして、季節ごとに様々な銘柄を展開している。その中でも「六三四」は埼玉産米を使用した地産地消の象徴的な一本として、地元ファンから特に愛着を持って迎えられている。五十嵐酒造は明治30年(1897年)創業の老舗蔵であり、SAKETIMEでは蔵全体として4.19点(424件)という高評価を獲得している。「さけ武蔵」という埼玉の代表的な酒造好適米を使用した点が、この銘柄の最大のアイデンティティとなっている。
テイスティングノート
香り
穏やかで落ち着きのある米の香り。さけ武蔵特有のふくよかな甘みを予感させる柔らかなアロマと、直汲み由来のフレッシュな発酵香が調和する。
味わい
口に含むとさけ武蔵特有のふくよかな旨味が広がり、酸度2.0の高めの酸がキレを生む。直汲み特有の微発泡がアクセントとなり、16%のアルコールの力強さを上手く受け止めている。辛口系ながら米の旨味をしっかり感じられる充実した味わい。
余韻
余韻は適度な長さで、旨味と酸が均衡を保ちながらすっきりと消えていく。食事の味を引き立てる食中酒としての役割を全うする後口。埼玉産の米と水が生み出す地酒らしい余韻が印象的だ。
酒
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