廣戸川 純米大吟醸は、福島県岩瀬郡天栄村の松崎酒造が全量手造りで醸す最高峰の日本酒である。福島県産の酒造好適米「夢の香」を40%まで磨き上げ、阿武隈山系の伏流水で仕込んでいる。天栄村の厳しい冬の寒さを活かした低温長期発酵が、繊細で優美な香味を生み出す。
松崎酒造は1892年(明治25年)創業。現在の蔵元杜氏・松崎祐行氏は東京農業大学で醸造学を学んだ後、2007年に蔵に戻り杜氏を務めている。当時20代という若さで杜氏を継いだ松崎氏は、福島県の酒造技術研究会で研鑽を積み、全国新酒鑑評会で複数回の金賞を獲得。天栄村という山間の小さな集落から、全国区の銘酒を送り出している。夢の香は福島県が独自に開発した酒造好適米で、五百万石と山田錦の交配から生まれた品種である。柔らかな旨味と軽やかな後口を特徴とし、廣戸川の酒質を支える重要な存在だ。
生産量は年間約300石と限られており、特に純米大吟醸は少量生産のため入手が難しい。しかしその品質は折り紙付きで、福島の地酒専門店や高級飲食店で重宝されている。冷蔵保存の上、ワイングラスで5〜8℃に冷やして味わうのが推奨される。会津や中通りの食文化とともに楽しむと、福島の風土がより深く感じられるだろう。
テイスティングノート
香り
華やかでエレガントな吟醸香が印象的。白桃、ライチ、白い花のニュアンスが品良く香り、奥にはバニラのような柔らかな甘い香りも。夢の香特有の穏やかで上品なアロマが全体を包み込む。開栓後時間が経つとともに香りが開き、複雑さを増していく。
味わい
絹のようになめらかな口当たりで、夢の香由来の柔らかな甘味と旨味が舌を包み込む。中盤ではきめ細やかな酸味が味わいに立体感を与え、旨味と甘味のハーモニーが美しい。40%精米ならではの雑味のないピュアな酒質で、透明感と深みが共存する稀有なバランス。アルコール感は穏やかに溶け込んでおり、度数を感じさせない。
余韻
エレガントな余韻が長く続く。白桃の甘い残り香と微かなミネラル感が余韻を彩り、消えゆくその瞬間まで美しさを保つ。夢の香らしい軽やかなキレが後味を締め、福島の酒のレベルの高さを実感させられるフィニッシュだ。
酒
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