醸し人九平次 彼の地(かのち)は、愛知県名古屋市の萬乗醸造が手がける「醸し人九平次」ブランドの最高峰エクスプレッションである。精米歩合40%の山田錦を使用した純米大吟醸で、萬乗醸造のフィロソフィーである「ワインのような日本酒」の概念を極限まで追求した一本。「彼の地」とは「あの場所」を意味し、まだ見ぬ理想の境地への憧憬が込められている。
萬乗醸造は1647年(正保4年)創業の老舗蔵である。15代目蔵元・久野九平治がフランスのブルゴーニュワインに感銘を受け、日本酒にワインのようなテロワール概念を導入したことで知られる。実際にブルゴーニュに自社のぶどう畑を取得し、ワイン造りを学びながら日本酒の革新に取り組むという異色の蔵元である。
「彼の地」は九平次ラインナップにおける最上位ティエとして位置づけられ、「Eau du Désir(望の智)」「別誂」と並ぶプレミアムラインの頂点に立つ。ブルゴーニュのグラン・クリュを思わせるような複雑さと気品を目指しており、日本酒でありながらフランス料理との相性を強く意識した設計がなされている。
醸し人九平次は2007年にパリの三つ星レストランで提供された最初の日本酒の一つとして知られ、以来フランスの高級レストランシーンで不動の地位を確立している。「彼の地」はその中でも最も格の高いキュヴェとして、ミシュラン星付きレストランのソムリエからの信頼が厚い。
テイスティングノート
香り
極めて複雑で多層的なアロマ。白桃、ライチ、パイナップルの熟した果実香がまず立ち上がり、その後にジャスミン、白百合のフローラルノートが現れる。ブルゴーニュワインを思わせるミネラル感と微かなナッツの香りが奥に潜み、時間とともに様々な表情を見せる。グラスの中で開くにつれてハチミツやカスタードの甘いニュアンスも感じられる。
味わい
口に含むと驚くほど繊細でありながら凝縮感のある味わい。上品な甘みと酸味のバランスが精緻で、まさにグラン・クリュのような構造を持つ。中盤では山田錦の旨みがじわりと舌の上で広がり、ミネラル感と細やかな酸が味わいに立体感と長さを与えている。テクスチャーは絹のように滑らかで、最高品質の日本酒のみが到達できる領域にある。
余韻
ロングで気品あるフィニッシュ。果実と花の余韻が息の長い旋律のように続き、最後にミネラルと微かな苦みが全体を引き締める。飲み終えた後もグラスに残る芳醇な香りが、この酒の格の高さを物語っている。
酒
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