谷川岳 純米吟醸は、群馬県利根郡川場村の永井酒造が醸す食中酒志向の純米吟醸酒である。永井酒造は1886年(明治19年)、初代・永井正治郎が川場村の水に惚れ込みこの地で酒造りを始めたのが起源で、現在は6代目・永井則吉氏が経営を担う。仕込み水は霊山・武尊山(標高2,158m)に降り注いだ雪や雨が尾瀬の大地で長い年月をかけてろ過され、川場村に湧き出る軟水。初代はこの水源を守るために約50haもの山林を取得しており、現在も蔵周辺の森は保全され蔵前には田んぼが広がる。
永井酒造は「水芭蕉(みずばしょう)」と「谷川岳」の2大ブランドを展開する。水芭蕉が山田錦を中心とした華やかで上品な日本酒であるのに対し、谷川岳は「毎日飲んでも飽きのこない食中酒」をコンセプトとした辛口寄りの銘柄である。本品は新潟を中心に栽培される酒造好適米「五百万石」を精米歩合60%に磨き上げて使用する。五百万石は心白率が高く雑味が少ない特性を持ち、1980年代の淡麗辛口ブームを牽引した酒米として知られ、すっきりとキレのある味わいを出しやすい。
近年の永井酒造は「NAGAI STYLE」と呼ばれる大改革を推進している。日本酒離れへの危機感から、ワインのコース料理に合わせる飲み方を日本酒に応用し、「スパークリング→スティル→ヴィンテージ→デザート」の4カテゴリーで食事全体とペアリングする新スタイルを提唱。スパークリング日本酒「水芭蕉 ピュア」は約700回の試行錯誤を経て2008年に誕生した。こうした革新的な取り組みの土台を支えるのが、谷川岳のような確かな品質の食中酒であり、永井酒造の伝統と革新の両輪を体現する銘柄である。
テイスティングノート
香り
メロンやリンゴ、ナシを思わせるフレッシュで透明感のある果実系吟醸香。ライチや白桃の要素もあり、過度に主張しすぎず食中酒として馴染みやすい穏やかな香り立ち。川場村の軟水由来のやわらかさが香りにも反映されている。
味わい
きりっとした辛口の骨格と、川場村の軟水由来のやわらかな甘みが共存する。米の旨みがしっかりと感じられ、フレッシュで軽やかな酸がバランスよく融合。五百万石特有のすっきりとしたキレが全体を引き締め、次の一口を誘う設計。冷やして飲むと香りとキレが際立ち、常温近くではコクが増す。
余韻
後味は長すぎず短すぎない上品な余韻。料理の邪魔をしないクリーンなフィニッシュで、和食全般——刺身、白身魚の塩焼き、豆腐料理、野菜の天ぷらなど——と幅広く好相性。
酒
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