マルスモルト ル・パピヨン 小松孝英エディションは、シリーズの中でも別格のプレミアムボトル。マルス駒ヶ岳蒸溜所の初代ポットスチルで1990年に蒸留されたモルト原酒を、アメリカンホワイトオーク樽(樽番号1043)で30年間熟成し、2021年に365本限定で瓶詰めされた。カスクストレングス55度、ナチュラルカスクストレングス、ノンチルフィルター。税込297,000円というシリーズ最高額の価格が示すとおり、マルスウイスキーの歴史そのものを液体に封じ込めた記念碑的ボトルである。
最大の特徴は、画家・小松孝英氏による全365点のラベルアート。日本産蝶類257種を琳派の技法で描いた各ボトル固有のラベルは、1本1本がアート作品であり、同じラベルのボトルは世界に一つとして存在しない。小松孝英氏は大分県中津市出身の現代日本画家で、伝統的な琳派の金銀箔技法と現代的感性を融合させた作品で知られる。ウイスキーの芳醇な味わいと蝶の舞う美しさを琳派の美意識で表現したこのコラボレーションは、クラフトウイスキーとファインアートの境界を溶かす試みとして注目を集めた。30年という長期熟成が生み出す円熟した味わいと、初代ポットスチルの原酒という不可逆的な希少性が本品の真の価値を形づくっている。
テイスティングノート
香り
30年の長期熟成がもたらす深い琥珀色から、熟したプラム、ダークチェリー、イチジクのコンポートといった濃厚なドライフルーツ香が立ち上がる。アメリカンホワイトオーク30年の複雑なウッドスパイス——シナモン、ナツメグ、クローブ——が幾層にも重なり、古い革製品のような深みのあるノートも。
味わい
カスクストレングス55度ながら驚くほど滑らかでシルキーな口当たり。30年の歳月が角を完全に取り去り、プラムジャム、メープルシロップ、ダークチョコレートの濃厚な甘みが舌の上でゆっくりと広がる。中盤から後半にかけて初代ポットスチルの個性——やや重厚でオイリーなテクスチャーと、古典的なモルトの深み——が現れ、30年熟成のウイスキーでしか味わえない円熟の境地。
余韻
極めて長い余韻。オーク、ドライフルーツ、レザー、スパイスが複雑に絡み合いながら何分もの間口腔内に残り続ける。最後はバニラとはちみつの甘さに収束し、穏やかで品格のあるフィニッシュ。
酒
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