アサヒ生ビール「マルエフ」は、1986年にアサヒビール株式会社が販売を開始した生ビールである。当時のアサヒビールは低迷期にあり、「ユウヒ(夕日)ビール」と揶揄されるほど厳しい状況に置かれていた。そんな逆境の中、マーケティングチームは5,000人規模の消費者嗜好調査を実施し、日本人が本当に求める味を徹底的に探求した。その結果として生まれたのが「コクがあるのに、キレがある」という、それまでのビール常識を覆す新しいコンセプトの生ビールだった。
「マルエフ」という愛称の由来は、開発時の社内呼称コード「F」にある。売上低迷に喘ぐアサヒビールを復活させたいという開発者たちの強い思いから、幸運の不死鳥「Fortune Phoenix」の頭文字「F」を取り、丸で囲んで「マルエフ(○F)」と呼ぶようになった。名前そのものにブランドの再生への祈りと意志が込められている。
1987年にはこの開発成果を元にした「アサヒスーパードライ」が誕生し、空前の大ヒットとなった。生産能力を集中させる経営判断のもと、1993年にアサヒ生ビールの缶・瓶は一旦終売となったが、飲食店での樽生は根強いファンに愛され続け、30年近くにわたって静かに飲み継がれてきた。その存在は「知る人ぞ知る名作」として業界内でも特別な地位を保ち続けた。
2021年9月、コロナ禍という特殊な社会状況の中でアサヒ生ビールは缶・瓶として全国復活を果たした。コロナ禍で人と人とのつながりやコミュニケーションの希薄さが社会問題となる中、「日本に、ぬくもりを。」というブランドパーパスを掲げ、ゆっくりと家族や友人と時間を共にする家飲みシーンにフィットする存在として再ローンチされた。復活後は予想を超える反響を呼び、アサヒスーパードライに次ぐ第2の柱として急成長を遂げた。
アサヒ生ビール瓶は、アルコール度数4.5%と缶ビールの標準より低めに設定されており、炭酸も控えめで飲みやすい仕上がり。麦のうまみをじっくりと感じられる「まろやか」な味わいを特徴とし、スーパードライとは対照的なポジショニングを持つ。瓶ビールならではのゆっくりとした泡の立ち方と、グラスに注いだときの黄金色の透明感がより一層の風情を演出する。居酒屋文化の中で育まれた「瓶ビール」という飲み方の情緒と相性抜群の1本である。
テイスティングノート
香り
麦芽の甘くやさしい香りが先立ち、穀物系の穏やかなアロマが続く。炭酸の爽やかな清涼感と共に、ほのかな花のようなニュアンスが感じられる。スーパードライのような刺激的な香りはなく、おだやかで包み込むような印象。
味わい
やわらかな口当たりで始まり、麦のうまみがじっくりと広がる。炭酸はほどよく控えめで、のどごしよりも味わいに比重を置いたテクスチャー。甘みと旨みのバランスが取れており、飲み飽きしない穏やかなコクが特徴的。
余韻
苦みは穏やかで後口がすっきりしており、長く引き過ぎない清潔感のある余韻。麦の甘みがやさしく残り、次の一口を自然に誘う。ゆっくり飲むほどに味わいの奥行きが増す、くつろぎ系ビールの真骨頂。
酒
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