グレンタウカーズ蒸留所(Glentauchers Distillery)は、スコットランド・スペイサイドのマルベン(Mulben)に位置する蒸留所。1897年にジェームズ・ブキャナン&カンパニーによって創設され、バランタインをはじめとする名門ブレンデッドウイスキーの主要原酒として知られる。現在はChivas Brothers(Pernod Ricard)が所有・運営し、シングルモルトの公式リリースは行われていないため、独立瓶詰め業者からの希少なボトルがウイスキー愛好家の注目を集めている。
グレンタウカーズ蒸留所(Glentauchers Distillery)|スコットランド・スペイサイドのスコッチウイスキー蒸留所
特徴
歴史
グレンタウカーズ蒸留所は1897年、ブレンデッドスコッチの巨人ジェームズ・ブキャナン&カンパニー(James Buchanan & Co.)によってスペイサイドのマルベン(Mulben)に設立された。同社の代表作「Black & White」の重要な原酒供給源として機能し、20世紀初頭からスコッチブレンディング産業の中心的な蒸留所として稼働し続けてきた。
2001年から2003年にかけて一時閉鎖されたが、その後Chivas Brothers(Pernod Ricard傘下)の管理のもと再稼働。現在はバランタイン(Ballantine’s)の主要ブレンド原酒を担う蒸留所として生産が続いており、年産能力は4.2百万リットルを誇る大型施設だ。スペイサイドの豊富な水源と良質な大麦を活かしたクリーンでフルーティーなスタイルが、複数の名門ブレンデッドウイスキーに欠かせない個性を与えている。
シングルモルトとしての公式ボトリングはほぼ存在しないため、ウイスキーファンの間では希少な存在として知られている。独立瓶詰め業者(インディペンデントボトラー)を通じてリリースされる年次限定ボトルは、その繊細かつ複雑な個性から高い評価を受ける。ダグラス・レイン、ゴードン&マクファイルなどの著名ボトラーが手がけたグレンタウカーズは、コレクターの間でも人気を博している。
基本情報
| 正式名称 | Glentauchers Distillery |
|---|---|
| 創業年 | 1897年 |
| 操業状況 | 稼働中 |
| 所有会社 | Chivas Brothers (Pernod Ricard) |
| 見学 | 不可能 |
蒸留所情報
| 蒸留方式 | ポットスチル |
|---|---|
| モルト使用 | シングルモルト |
| 水源 | スペイ川支流 |
| 熟成倉庫 | ダンネージ式・ラック式 |
| 年間生産量 | 420万リットル/年 |
| 主力ジャンル | ウイスキー、スコッチウイスキー |
| 主要ブランド | グレンタウカーズ |
代表銘柄
所在地
| 国 | イギリス |
|---|---|
| 都道府県州 | Speyside, Scotland |
| 住所 | Glentauchers, Mulben, Keith AB55 6YL, UK |
| 郵便番号 | AB55 6YL |
この地域について
スコットランド北東部、インヴァネスとアバディーンの間に横たわるスペイサイドは、全長172kmのスペイ川が灌漑する豊かな農業地帯だ。源流をモナドリアス山地のロッホ・スペイ(標高約300m)に持つスペイ川は、スコットランド第3の長さを誇り最も流れの速い川の一つで、ケアンゴームズ国立公園を抜けてモーレイ・ファース(Moray Firth)へと注ぐ。川が育む軟水とミネラルバランス、周辺農地の良質な大麦、ケアンゴームの泥炭——この三拍子が世界最高密度のウイスキー産地を形成した背景にある。スペイ川はまた「スペイキャスト」と呼ばれる独自のフライフィッシング技法の発祥地として知られ、サーモン釣りを求める世界中のアングラーを引き付ける英国随一の鮭川でもある。
1823年の消費税法(Excise Act)成立が密造横行の時代に終止符を打ち、翌1824年にジョージ・スミスがグレン・リヴェット渓谷で最初の合法免許を取得。モダン・スコッチ産業の礎を築いた。19世紀後半にグレート・ノース鉄道がスペイサイドに開通すると大麦・石炭・樽の輸送が一気に整い、各地で蒸留所創業ラッシュが起きた。現在も稼働する蒸留所はストラスアイラ(1786年創業・スコットランド最古の連続稼働蒸留所)からダフタウン、アベラワー、クレイゲラキまで50以上が密集し、2009年のスコッチウイスキー規則でスペイサイドが独立産地として正式認定された。
スペイ川岸に建つ16世紀のバリンダロッホ城(Ballindalloch Castle)はマクファーソン=グラント家が数百年にわたり居住し続ける生きた史跡だ。全長116kmのスペイサイド・ウェイはモーレイ湾の港町バッキーからケアンゴームズの奥地まで続くロング・ディスタンス・ウォーキングルートで、沿道には蒸留所見学スポットが点在する。英国唯一の現役樽職人工房スペイサイド・クーパレッジや7蒸留所を巡るモルトウイスキー・トレイル(全長99km)は、毎年5月に開催される「スピリット・オブ・スペイサイド・ウイスキー・フェスティバル」と合わせて54カ国以上のウイスキーファンを呼び込む。
現在スコットランド全体のシングルモルトの約50〜60%がスペイサイド産であり、世界で最も売れる2大シングルモルト——グレンリベットとグレンフィディック——がともにこの地に根を持つことが、スペイサイドを「ウイスキーの聖地」たらしめている。