グレンスペイ蒸留所(Glen Spey Distillery)|スコットランド・スペイサイドのスコッチウイスキー蒸留所

グレンスペイ蒸留所は、スコットランド・スペイサイドのロシーズ(Rothes)に位置するスコッチウイスキー蒸留所だ。1878年にジェームズ・スチュアート(James Stuart)によって創業され、ロシーズに集中する5つの蒸留所のひとつとして知られる。軽やかで草原のような爽快なスタイルのモルトウイスキーを生産し、現在はDiageo傘下でJ&Bブレンドの原酒として活躍している。

グレンスペイはスペイサイドの中でも特に軽やかなキャラクターを持つ蒸留所として評価されており、Diageoが展開するFlora&Fauna(フローラ&ファウナ)シリーズを通じてシングルモルトとしても流通している。ロシーズという小さな町に複数の蒸留所が集まる独特の地理的背景が、この地域の豊富な水資源と良質な大麦を物語る。

特徴

ロシーズ5蒸留所のひとつとして知られるスペイサイド蒸留所。軽やかで草原を思わせる爽快なキャラクターが特徴で、J&Bブレンドの原酒として重要な役割を担う。Flora & Faunaシリーズ12年がシングルモルトとして評価されている。

歴史

1878年、ジェームズ・スチュアート(James Stuart)によりスペイサイドのロシーズ(Rothes)に創業。ロシーズはスペイ川の支流フィドック川沿いに位置し、グレングラント、スペイバーン、カーダウ(カーデュ)など複数の蒸留所が集まるウイスキー生産の一大集積地として知られていた。

創業後まもなくW&A. Gilbey社が買収し、後にIDV(インターナショナル・ディスティラーズ&ヴィントナーズ)を経てDiageoの一部となった。J&Bブレンデッドスコッチの原酒として機能し続けてきたことで、シングルモルトとしての認知度は長らく低かった。

1990年代にDiageoが展開するFlora&Fauna(フローラ&ファウナ)シリーズの一本として12年熟成のシングルモルトがボトリングされ、コアレンジの希少なリリースとして世界中のマニアに注目された。スペイサイドの典型的な軽やかさを体現するグレンスペイは、専門家からブレンダーズシークレットとも称される存在だ。

基本情報

正式名称 Glen Spey Distillery
創業年 1878年
操業状況 稼働中
所有会社 Diageo
見学 不可能
公式サイト https://www.malts.com/en-gb/distilleries/glen-spey/
Wikipedia Wikipedia

蒸留所情報

蒸留器数 ウォッシュスチル2基、スピリットスチル2基
蒸留方式 ポットスチル
モルト使用 スコットランド産大麦麦芽
水源 ダニファーグ・スプリング(Doonie Farg Spring)
熟成倉庫 ダンネージ式熟成庫
年間生産量 年間約140万リットル
使用樽 アメリカンオーク(エックス・バーボン)
主力ジャンル ウイスキースコッチウイスキー
主要ブランド グレンスペイ

代表銘柄

所在地

イギリス
都道府県州 スコットランド
住所 Glen Spey, Rothes, Aberlour AB38 7AU, UK
郵便番号 AB38 7AU

この地域について

スコットランド北東部、インヴァネスとアバディーンの間に横たわるスペイサイドは、全長172kmのスペイ川が灌漑する豊かな農業地帯だ。源流をモナドリアス山地のロッホ・スペイ(標高約300m)に持つスペイ川は、スコットランド第3の長さを誇り最も流れの速い川の一つで、ケアンゴームズ国立公園を抜けてモーレイ・ファース(Moray Firth)へと注ぐ。川が育む軟水とミネラルバランス、周辺農地の良質な大麦、ケアンゴームの泥炭——この三拍子が世界最高密度のウイスキー産地を形成した背景にある。スペイ川はまた「スペイキャスト」と呼ばれる独自のフライフィッシング技法の発祥地として知られ、サーモン釣りを求める世界中のアングラーを引き付ける英国随一の鮭川でもある。

1823年の消費税法(Excise Act)成立が密造横行の時代に終止符を打ち、翌1824年にジョージ・スミスがグレン・リヴェット渓谷で最初の合法免許を取得。モダン・スコッチ産業の礎を築いた。19世紀後半にグレート・ノース鉄道がスペイサイドに開通すると大麦・石炭・樽の輸送が一気に整い、各地で蒸留所創業ラッシュが起きた。現在も稼働する蒸留所はストラスアイラ(1786年創業・スコットランド最古の連続稼働蒸留所)からダフタウン、アベラワー、クレイゲラキまで50以上が密集し、2009年のスコッチウイスキー規則でスペイサイドが独立産地として正式認定された。

スペイ川岸に建つ16世紀のバリンダロッホ城(Ballindalloch Castle)はマクファーソン=グラント家が数百年にわたり居住し続ける生きた史跡だ。全長116kmのスペイサイド・ウェイはモーレイ湾の港町バッキーからケアンゴームズの奥地まで続くロング・ディスタンス・ウォーキングルートで、沿道には蒸留所見学スポットが点在する。英国唯一の現役樽職人工房スペイサイド・クーパレッジや7蒸留所を巡るモルトウイスキー・トレイル(全長99km)は、毎年5月に開催される「スピリット・オブ・スペイサイド・ウイスキー・フェスティバル」と合わせて54カ国以上のウイスキーファンを呼び込む。

現在スコットランド全体のシングルモルトの約50〜60%がスペイサイド産であり、世界で最も売れる2大シングルモルト——グレンリベットとグレンフィディック——がともにこの地に根を持つことが、スペイサイドを「ウイスキーの聖地」たらしめている。