グレンエルギン蒸留所は1898年創業のスペイサイドに位置する歴史ある蒸留所だ。エルギン近郊のロングモーン村に隣接し、ディアジオ傘下として稼働している。長年「ホワイトホース」ブレンドのキーモルトとして業界内で重宝されてきた蒸留所であり、その果実味豊かでスパイシーな原酒は愛好家から高い評価を受けている。
グレンエルギン蒸留所(Glen Elgin Distillery)|スコットランド・スペイサイドのスコッチウイスキー蒸留所
特徴
歴史
グレンエルギン蒸留所は1898年、ウイスキー産業が活況を呈した「ウイスキーブーム」の末期にウィリアム・シンプソンとジェームズ・カーによって設立された。エルギン近郊のロングモーン村のほど近くに位置し、スペイサイドの豊かな水源と農地環境を活かした立地だ。しかし創業直後にバトル・アンド・マクレガー社の経営破綻による業界全体の不況が到来し、蒸留所は長期間の休止を余儀なくされた。1900年から1902年の短期間のみ稼働した後、再び閉鎖という波乱のスタートを切った。
20世紀初頭の長い沈黙を経て、グレンエルギンは1964年に大規模な改修・拡張工事を経て近代的蒸留所として再出発した。その後スコティッシュ・マルト・ディスティラーズ(SMD)を経て、現在は世界最大のスピリッツ企業ディアジオの傘下となっている。ディアジオはグレンエルギンを主にブレンデッドウイスキー向けの原酒生産拠点として活用しており、年間生産量は控えめながら安定した高品質のモルト原酒を供給し続けている。
グレンエルギンは「ホワイトホースのキーモルト」として広く知られ、歴史ある銘柄ブレンドの核を担ってきた。ホワイトホース(White Horse)はかつてエドワード・マッキーによって生み出されたスコッチブレンドの名作であり、グレンエルギンの果実味豊かでスパイシーな原酒がその個性の要となってきた。シングルモルトとしての公式ボトリングはフローラ&ファウナシリーズなど限定的なリリースに留まるが、ウイスキー愛好家の間では「隠れた名品」として高い評価を得ている。
基本情報
| 正式名称 | Glen Elgin Distillery |
|---|---|
| 創業年 | 1898年 |
| 操業状況 | 稼働中 |
| 所有会社 | Diageo |
| 見学 | 不可能 |
| 公式サイト | https://www.malts.com/en-gb/distilleries/glen-elgin/ |
蒸留所情報
| 蒸留器数 | 6基(ポットスチル) |
|---|---|
| 蒸留方式 | ポットスチル蒸留(2回蒸留) |
| モルト使用 | ノンピート |
| 水源 | ムニングスウェル周辺の湧き水 |
| 熟成倉庫 | ダンネージ式 |
| 年間生産量 | 約170万リットル(年間) |
| 使用樽 | アメリカンオーク(エックス・バーボン)、ヨーロピアンオーク(シェリー) |
| 主力ジャンル | ウイスキー、スコッチウイスキー |
| 主要ブランド |
グレンエルギン グレンエルギン |
代表銘柄
所在地
| 国 | イギリス |
|---|---|
| 都道府県州 | Moray |
| 住所 | Glen Elgin, Longmorn, Elgin IV30 8SL, UK |
| 郵便番号 | IV30 8SL |
この地域について
スコットランド北東部、インヴァネスとアバディーンの間に横たわるスペイサイドは、全長172kmのスペイ川が灌漑する豊かな農業地帯だ。源流をモナドリアス山地のロッホ・スペイ(標高約300m)に持つスペイ川は、スコットランド第3の長さを誇り最も流れの速い川の一つで、ケアンゴームズ国立公園を抜けてモーレイ・ファース(Moray Firth)へと注ぐ。川が育む軟水とミネラルバランス、周辺農地の良質な大麦、ケアンゴームの泥炭——この三拍子が世界最高密度のウイスキー産地を形成した背景にある。スペイ川はまた「スペイキャスト」と呼ばれる独自のフライフィッシング技法の発祥地として知られ、サーモン釣りを求める世界中のアングラーを引き付ける英国随一の鮭川でもある。
1823年の消費税法(Excise Act)成立が密造横行の時代に終止符を打ち、翌1824年にジョージ・スミスがグレン・リヴェット渓谷で最初の合法免許を取得。モダン・スコッチ産業の礎を築いた。19世紀後半にグレート・ノース鉄道がスペイサイドに開通すると大麦・石炭・樽の輸送が一気に整い、各地で蒸留所創業ラッシュが起きた。現在も稼働する蒸留所はストラスアイラ(1786年創業・スコットランド最古の連続稼働蒸留所)からダフタウン、アベラワー、クレイゲラキまで50以上が密集し、2009年のスコッチウイスキー規則でスペイサイドが独立産地として正式認定された。
スペイ川岸に建つ16世紀のバリンダロッホ城(Ballindalloch Castle)はマクファーソン=グラント家が数百年にわたり居住し続ける生きた史跡だ。全長116kmのスペイサイド・ウェイはモーレイ湾の港町バッキーからケアンゴームズの奥地まで続くロング・ディスタンス・ウォーキングルートで、沿道には蒸留所見学スポットが点在する。英国唯一の現役樽職人工房スペイサイド・クーパレッジや7蒸留所を巡るモルトウイスキー・トレイル(全長99km)は、毎年5月に開催される「スピリット・オブ・スペイサイド・ウイスキー・フェスティバル」と合わせて54カ国以上のウイスキーファンを呼び込む。
現在スコットランド全体のシングルモルトの約50〜60%がスペイサイド産であり、世界で最も売れる2大シングルモルト——グレンリベットとグレンフィディック——がともにこの地に根を持つことが、スペイサイドを「ウイスキーの聖地」たらしめている。