キルホーマン蒸留所(Kilchoman Distillery)|スコットランド・アイラのシングルモルトスコッチウイスキー蒸留所

キルホーマン蒸留所はアイラ島北西部のロックサイド農場(Rockside Farm)に構えるアイラ唯一のファーム蒸留所で、「大麦の栽培からボトリングまで」を一島内で完結させるフル・エステート・プロダクションを実践している。スコットランドでフロアモルティングを行う数少ない蒸留所のひとつであり、自社農場産の大麦を自社麦芽製造設備で処理する。

創業家のウィルス家は現在も経営の中枢を担い、アンソニーがマスターディスティラー兼マネージングディレクターを務めている。フラッグシップ「マキーア・ベイ」はIWSCでベスト・イン・クラスを受賞するなど国際的な評価も高く、若い蒸留所ながらスコッチシングルモルト界に確固たる地位を築いている。

代表的な限定リリース「100%アイラ」は自社農場で栽培・収穫した大麦を自社でフロアモルティングし、蒸留・熟成・瓶詰めまでのすべてをアイラ島内で完結させた完全自給自足のウイスキーで、「ファーム・トゥ・ボトル」の理念を最も純粋に体現している。ビジターセンターも併設されており、農場の散策とウイスキーテイスティングを組み合わせた体験型ツアーが人気だ。

特徴

2005年設立のアイラ島最新蒸留所。フロアモルティングから瓶詰めまで島内で完結する「100%アイラ」を実現。農場蒸留所として自家栽培大麦も使用。

歴史

キルホーマン蒸留所は2005年12月、アンソニー・ウィルスと妻キャシーによってアイラ島北西部のロックサイド農場に設立された。1908年以来約100年ぶりにアイラ島に誕生した新蒸留所として注目を集めた。

2015年にはロックサイド農場を取得し生産規模を拡張。2019年にはスチル数を2基から4基に倍増させ、年間生産能力は48万リットルに達した。

基本情報

創業年 2005年
見学 不明
公式サイト https://kilchomandistillery.com/

蒸留所情報

蒸留器数 4
主力ジャンル ウイスキースコッチウイスキー
主要ブランド キルホーマン
キルホーマン
Machir Bay
Sanaig
100% Islay

代表銘柄

所在地

イギリス

この地域について

スコットランド西部、インナー・ヘブリディーズ諸島の南端に浮かぶアイラ島は、本土アーガイルから約25kmの海峡を隔てた面積約620km²の島だ。人口わずか約3,000人のこの小島が「アイラスタイル」として世界に知られる独自のウイスキーを生む秘密は、島の大地に広がる特殊な泥炭(ピート)にある。海藻・海洋植物を含むアイラのピートは燃焼時にスモーキー・ヨード・磯の香りを放ち、大麦麦芽乾燥にこの煙を使うことで他に類を見ない個性が生まれる。現在10の蒸留所が稼働しており、各蒸留所のフェノール値はアードベッグ55ppm、ラフロイグ35ppm、ボウモア25ppmと個性はさまざまだ。

中世、アイラ島は「ロードシップ・オブ・ジ・アイルズ(Lordship of the Isles)」の中枢を担った。13〜15世紀にクラン・ドナルドの首長たちが拠点としたロッホ・フィンラガン(Loch Finlaggan)は、ヘブリディーズ諸島全体を支配する独立的な権力の座であり、湖内の評議会島ではスコットランドとアイルランドにまたがる広域議会が開かれた。新ロードの即位に際し戴冠石の上に裸足で立つ古式の儀礼が行われたこの聖地は「クラン・ドナルドの揺りかご」と呼ばれる。1493年にスコットランド王ジェームズ4世によりロードシップが廃止されるまで、アイラはゲール文化圏の政治・文化的中心地であり続けた。

8世紀に建てられたキルダルトン・クロス(Kildalton Cross)はスコットランドに現存する最も保存状態のよいケルト十字の一つで、アイルランドとアイラの深い文化的つながりを今に伝える。島北西部のRSPBロッホ・グルイナート自然保護区(約1,600ha)には世界のグリーンランドバーナクルグース個体数の約45%が越冬に訪れ、希少野鳥の宝庫としても知られる。毎年5月下旬に開催される「フェイシュ・イーレ(Fèis Ìle)」は世界中のウイスキーファンが集う巡礼の祭典で、各蒸留所が限定ボトルと特別体験を用意して島全体が沸き立つ。

1779年創業のボウモアをはじめ、1815年に同年創業したラフロイグとアードベッグを含む歴史ある蒸留所群が、アイラを単なる産地ではなく「ウイスキーの島」として世界に刻み込んでいる。