グレンファークラス蒸留所(Glenfarclas Distillery)|スコットランド・スペイサイドのシングルモルトスコッチウイスキー蒸留所

グレンファークラスは1836年にロバート・ヘイがライセンスを取得したことに端を発するスペイサイドの蒸留所であり、1791年以前から操業していた証拠も残る。1865年6月8日、ジョン・グラントが511ポンドで蒸留所を購入し、以降160年以上にわたってグラント家が一族経営を続けている。スコッチ業界において大手グループに属さない完全独立系の蒸留所として、「独立の精神(The Spirit of Independence)」を社是に掲げている。

蒸留所が位置するバリンダロッホはベン・リネス山の麓に広がる豊かな農地地帯で、その湧き水を仕込み水として使用。スペイサイド最大規模の6基のポットスチルはガス直火加熱という伝統的な方式を採用しており、他の蒸留所との差別化を図っている。全ストックの90%以上がオロロソシェリーバットで熟成されており、石壁と土間を持つ伝統式ダニッジウェアハウスに保管される。

1968年には業界初のカスクストレングスシングルモルト「グレンファークラス105」をリリースし、現在に続くカスクストレングスブームの先駆けとなった。2007年には1952〜1994年の全年次をカバーする43本のシングルカスクコレクション「ファミリーカスクス」を発売。Whisky Magazineの「Distiller of the Year」を3度受賞するなど業界内で高い地位を保っている。

特徴

スペイサイドの家族経営蒸留所。グラント家が6世代にわたり所有・運営。シェリーカスク100%熟成にこだわり、豊かでフルボディなスタイルが特徴。

基本情報

創業年 1836年
見学 不明
公式サイト https://www.glenfarclas.com/

蒸留所情報

蒸留器数 6
主力ジャンル ウイスキースコッチウイスキー
主要ブランド グレンファークラス
グレンファークラス
Glenfarclas 105
Family Casks

代表銘柄

所在地

イギリス

この地域について

スコットランド北東部、インヴァネスとアバディーンの間に横たわるスペイサイドは、全長172kmのスペイ川が灌漑する豊かな農業地帯だ。源流をモナドリアス山地のロッホ・スペイ(標高約300m)に持つスペイ川は、スコットランド第3の長さを誇り最も流れの速い川の一つで、ケアンゴームズ国立公園を抜けてモーレイ・ファース(Moray Firth)へと注ぐ。川が育む軟水とミネラルバランス、周辺農地の良質な大麦、ケアンゴームの泥炭——この三拍子が世界最高密度のウイスキー産地を形成した背景にある。スペイ川はまた「スペイキャスト」と呼ばれる独自のフライフィッシング技法の発祥地として知られ、サーモン釣りを求める世界中のアングラーを引き付ける英国随一の鮭川でもある。

1823年の消費税法(Excise Act)成立が密造横行の時代に終止符を打ち、翌1824年にジョージ・スミスがグレン・リヴェット渓谷で最初の合法免許を取得。モダン・スコッチ産業の礎を築いた。19世紀後半にグレート・ノース鉄道がスペイサイドに開通すると大麦・石炭・樽の輸送が一気に整い、各地で蒸留所創業ラッシュが起きた。現在も稼働する蒸留所はストラスアイラ(1786年創業・スコットランド最古の連続稼働蒸留所)からダフタウン、アベラワー、クレイゲラキまで50以上が密集し、2009年のスコッチウイスキー規則でスペイサイドが独立産地として正式認定された。

スペイ川岸に建つ16世紀のバリンダロッホ城(Ballindalloch Castle)はマクファーソン=グラント家が数百年にわたり居住し続ける生きた史跡だ。全長116kmのスペイサイド・ウェイはモーレイ湾の港町バッキーからケアンゴームズの奥地まで続くロング・ディスタンス・ウォーキングルートで、沿道には蒸留所見学スポットが点在する。英国唯一の現役樽職人工房スペイサイド・クーパレッジや7蒸留所を巡るモルトウイスキー・トレイル(全長99km)は、毎年5月に開催される「スピリット・オブ・スペイサイド・ウイスキー・フェスティバル」と合わせて54カ国以上のウイスキーファンを呼び込む。

現在スコットランド全体のシングルモルトの約50〜60%がスペイサイド産であり、世界で最も売れる2大シングルモルト——グレンリベットとグレンフィディック——がともにこの地に根を持つことが、スペイサイドを「ウイスキーの聖地」たらしめている。