クー・ボカン シグネチャー(Cù Bòcan Signature)は、ハイランドのトマーティン蒸留所が毎年冬季の約1週間だけ生産する限定のピーテッドモルト原酒「クー・ボカン」を中心に、バーボン樽・オロロソシェリー樽・ノースアメリカン・バージンオークの三種の樽から厳選した原酒をブレンドした軽ピートシングルモルトだ。通常のトマーティンとはまったく異なるスモーキーな側面を持つ、蒸留所の二面性を体現する独特の一本だ。
クー・ボカンは2013年に初めてリリースされたトマーティンの「別人格」ともいえるシリーズで、2019年にリブランディングが行われ現在の「シグネチャー・クリエーション#1・クリエーション#2」の三ラインが「Unlocking The Unusual(異形を解き放つ)」というキャッチコピーで展開されている。「クー・ボカン(Cù Bòcan)」はゲール語で「幽霊のような犬」を意味し、ジュラ蒸留所周辺に伝わる霊犬の伝説に由来している。
クー・ボカン シグネチャーの製法上の特徴は「シーズナル・ピーティング」にある。通常はノンピートモルトで稼働するトマーティンの蒸留器が、一年に一度の冬季だけピーテッドモルトを仕込む。この希少なピーテッド原酒が、バーボン・シェリー・バージンオークの三種の樽でそれぞれ個性を磨かれ、その後ブレンドされることでシグネチャーが完成する。
クー・ボカン シグネチャーは国際的なウイスキーレビューメディアから高評価を受けており、複数の専門ブログ・レビューサイトで「軽いピートとシェリー樽の見事な調和」として評価されている。アイラ系の重いピートが苦手な愛好家がスモーキーウイスキーを初体験する入口として推薦されることが多い。
ラインナップにおいてシグネチャーはクー・ボカンシリーズの入門的ポジションにある。より個性的なクリエーション#1(ファーストフィル・バーボン仕上げ)・クリエーション#2(赤ワイン樽仕上げ)に比べ、三種の樽のバランスが最も均等で飲みやすい仕上がりだ。
ウイスキー専門ブログ「Whiskyforeveryone」「Wordsofwhisky」「Whiskynotes」など複数の評価メディアで好意的なレビューを受けており、特に「軽いピートとボーイション・シェリーのバランスが絶妙」という点が一貫して評価されている。「アイラほどではないが確かにスモーキー」という方向性が、広い層のウイスキー愛好家に支持される理由の一つとなっている。
テイスティングノート
香り
バーボン・シェリー・バージンオークの三種の樽が複雑に絡み合う。ピーチと黄色いリンゴの甘い果実香の上に、バタービスケットとハチミツのやさしい甘みが重なる。軽いウッドスモークがさりげなく漂い、「ちょうどいい」スモーキーさを予感させる。
味わい
口当たりはクリーミーでバニラカスタードのような甘みが先行する。レモンと蜂蜜、ナツメグとシナモンのスパイスが続き、ウッドスモークが中盤で存在感を示す。三樽のバランスが絶妙で、飲み疲れしない調和のある味わいだ。
余韻
中程度の余韻。スモークとスパイスがゆっくりと消え、バニラと蜂蜜の甘みが最後に残る。ウッドスモークの清潔な残り香と甘みが共存し、軽ピートらしいすっきりとした後口が特徴的だ。
酒
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