クレイゲラヒ蒸留所(Craigellachie Distillery)|スコットランド・スペイサイドのスコッチウイスキー蒸留所

クレイゲラヒ蒸留所は1891年にスペイサイドのクレイゲラヒ村に設立された。「クレイゲラヒ(Craigellachie)」はスコットランド・ゲール語で「岩の集まり」を意味し、スペイ川とフィドル川が合流する地点に建つ蒸留所の立地を反映している。1998年にジョン・デュワー&サンズ(バカルディ)が取得し、現在もバカルディ傘下でデュワーズブレンドの原酒として重要な役割を担う。

クレイゲラヒの最大の特徴は、スコットランドでも極めて珍しい旧式のウォームタブ(worm tub)冷却システムを維持している点だ。現代的なシェルアンドチューブ型冷却器とは異なり、銅管を水槽に通す旧来の方式が独特の肉厚でサルファリーな風味を生み出す。この「老い」の哲学がクレイゲラヒのシグネチャーキャラクターとなっている。

独立ボトラーのウィスク・イーが日本市場でのプロモーションに注力したことで、日本のウイスキー愛好家の間での認知度は高い。WWAやSFWSCで受賞歴があり、「ビースト・オブ・クレイゲラヒ」という愛称のとおり力強いスペイサイドスタイルとして国際的な評価を確立している。

特徴

スペイサイド・クレイゲラヒ村の蒸留所。硫黄分を含むウォーム・タブ(ワーム・タブ)冷却による力強いスタイルが特徴。「岩のように頑固な」味わいで知られる。

歴史

クレイゲラヒ蒸留所は1891年、スペイ川とフィディック川の合流点を見下ろす岩山の上に建設された。設計はスコットランドの蒸留所建築の第一人者チャールズ・ドイグが手がけ、彼の代名詞であるパゴダ屋根が今もその頂に残る。「Stand Fast(断固として立つ)」という蒸留所のモットーはこの立地を体現している。

1916年にピーター・マッキーが買収後、ディスティラリー・カンパニー、SMD(スコッチ・モルト・ディスティラーズ)を経て1998年にジョン・デュワー&サンズが購入し現在はバカルディ傘下。長らくデュワーズのブレンド用ニューメイクの供給源として地味な存在だったが、2014年にシングルモルトとしての独立ブランドが立ち上げられた。

ワームタブ(伝統的螺旋管式コンデンサー)は現代蒸留所では珍しく、これが生む重厚でボディ豊かな、わずかに硫黄含みの肉感的な酒質が「不格好で本物のスペイサイド」として世界の愛好家から熱狂的な支持を受けている。Scotch Malt Whisky Society(SMWS)からも「縁の下の英雄(Unsung Hero)」と評される蒸留所だ。

基本情報

正式名称 クレイゲラヒ蒸留所(Craigellachie Distillery)|スコットランド・スペイサイドのスコッチウイスキー蒸留所
創業年 1891年
操業状況 稼働中
所有会社 バカルディ(Bacardi Limited)傘下、ジョン・デュワー&サンズ運営
見学 不明
公式サイト https://www.craigellachie.com/

蒸留所情報

蒸留器数 4基(ウォッシュ×2、スピリット×2)
蒸留方式 ポットスチル2回蒸留(ワームタブ冷却)
水源 Blue Hill Spring(コンバル丘陵の専用水源)
熟成倉庫 ダンネージ式
年間生産量 年間約400万リットル
主力ジャンル ウイスキースコッチウイスキー
主要ブランド クレイゲラヒ

代表銘柄

所在地

イギリス
都道府県州 Moray
住所 Fife Street, Craigellachie, Aberlour, Moray AB38 9SZ, Scotland
郵便番号 AB38 9SZ

この地域について

スコットランド北東部、インヴァネスとアバディーンの間に横たわるスペイサイドは、全長172kmのスペイ川が灌漑する豊かな農業地帯だ。源流をモナドリアス山地のロッホ・スペイ(標高約300m)に持つスペイ川は、スコットランド第3の長さを誇り最も流れの速い川の一つで、ケアンゴームズ国立公園を抜けてモーレイ・ファース(Moray Firth)へと注ぐ。川が育む軟水とミネラルバランス、周辺農地の良質な大麦、ケアンゴームの泥炭——この三拍子が世界最高密度のウイスキー産地を形成した背景にある。スペイ川はまた「スペイキャスト」と呼ばれる独自のフライフィッシング技法の発祥地として知られ、サーモン釣りを求める世界中のアングラーを引き付ける英国随一の鮭川でもある。

1823年の消費税法(Excise Act)成立が密造横行の時代に終止符を打ち、翌1824年にジョージ・スミスがグレン・リヴェット渓谷で最初の合法免許を取得。モダン・スコッチ産業の礎を築いた。19世紀後半にグレート・ノース鉄道がスペイサイドに開通すると大麦・石炭・樽の輸送が一気に整い、各地で蒸留所創業ラッシュが起きた。現在も稼働する蒸留所はストラスアイラ(1786年創業・スコットランド最古の連続稼働蒸留所)からダフタウン、アベラワー、クレイゲラキまで50以上が密集し、2009年のスコッチウイスキー規則でスペイサイドが独立産地として正式認定された。

スペイ川岸に建つ16世紀のバリンダロッホ城(Ballindalloch Castle)はマクファーソン=グラント家が数百年にわたり居住し続ける生きた史跡だ。全長116kmのスペイサイド・ウェイはモーレイ湾の港町バッキーからケアンゴームズの奥地まで続くロング・ディスタンス・ウォーキングルートで、沿道には蒸留所見学スポットが点在する。英国唯一の現役樽職人工房スペイサイド・クーパレッジや7蒸留所を巡るモルトウイスキー・トレイル(全長99km)は、毎年5月に開催される「スピリット・オブ・スペイサイド・ウイスキー・フェスティバル」と合わせて54カ国以上のウイスキーファンを呼び込む。

現在スコットランド全体のシングルモルトの約50〜60%がスペイサイド産であり、世界で最も売れる2大シングルモルト——グレンリベットとグレンフィディック——がともにこの地に根を持つことが、スペイサイドを「ウイスキーの聖地」たらしめている。

受賞歴

コンテストグレード銘柄
2025 SFWSC ダブルゴールド クレイゲラヒ 13年クレイゲラヒ 17年
2024 SFWSC ダブルゴールド クレイゲラヒ 17年