メーカーズマークの誕生は、一枚のパンへの情熱から始まった。1953年、T・ウィリアム「ビル」サミュエルズ・シニアはケンタッキー州ローレットのバークス蒸留所を購入し、新しいバーボンのレシピ開発に着手した。当時のバーボンに主流だったライ麦を使うことを嫌ったビルは、7種類の異なるマッシュビルで候補のレシピを考案し、それぞれで実際にパンを焼いて最もおいしいレシピ——ライ麦を使わずソフトレッドウィンターウィートを採用したもの——を選んだ。この伝説的なエピソードが「ウィーテッドバーボン」の傑作を生んだ。
1954年から生産を開始し、最初のボトルが市場に出たのは1959年のことだ。ブランド名「メーカーズマーク」はスコッチウイスキーの伝統である「職人の刻印」に由来し、品質へのこだわりを込めてビルの妻マージーが命名した。真紅の封蝋ワックスでボトルのトップをディップする独特の包装も、マージーが考案したものだ。今日でも各ボトルは手作業でワックスがけされ、それぞれの垂れ方が微妙に異なる「世界にひとつだけのボトル」となっている。
製法上の最大の特徴は、オザーク山地産の細粒ホワイトオーク材を9カ月以上屋外で自然乾燥させてからバレルに加工するという樽へのこだわりだ。さらに熟成中に上下の棚を入れ替える「ローテーション」を行い、倉庫内の温度差による品質のばらつきを最小化している。この手間を惜しまない製法が、ライ麦を使わないウィーテッドレシピと相まって、メーカーズマークならではの滑らかでソフトな口当たりを生み出す。
テイスティングノート
香り
バニラビーンとバタースコッチの甘やかな香りが全面に広がり、フレッシュな小麦の穀物感と蜂蜜、カラメルが重なる。スパイシーさは穏やかで、代わりにほのかなフルーティさとオークが調和する。
味わい
滑らかでソフト、小麦レシピが生むまろやかな口当たりが特徴的。バニラクリーム、キャラメル、バタースコッチの甘みが中心にあり、ほのかな果実味と柔らかなタンニン感が続く。
余韻
中程度の長さで穏やか。バニラとキャラメルの甘みが最後まで続き、スパイシーさは控えめで、全体が丸くまとまって静かに消える。
酒
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